クルーズ再開へ米CDCの新指令

2020.11.30 00:00

 クルーズ船でのコロナウイルスまん延防止のために米疾病対策センター(CDC)は、大型客船の米国領海での全面運航停止令を3月に発令以来、すでに4度延期して最終的に10月31日までとなっていた。同時に業界団体クルーズライン国際協会(CLIA)も自主的な運航停止期間を何度も延長する異例な事態が続いていた。

 10月末の期限決定時も、一部メディアはCDCは来年2月までを主張したが、大統領府の介入で変更になったと伝えていた。この間、欧州では6月に小型船のクルーズ再開が始まり、8月にはCLIA会員会社の船客2000人超の大型船2隻が行政の協力を得て、イタリアクルーズを感染者なしに成功裏に実施している。

 9月にCLIAは医療専門家を含めたパネルを立ち上げクルーズ再開のための74項目のウイルス対応と新しいクルーズのあり方の指針をCDCに提案した。

 10月30日、期限終了前日にCDCは運航停止令を解除、代わりに「条件付き運航指令」を発表した。安全で責任あるクルーズ再開までには4段階を通過しなければならない。第1段階は、現在待機中の船上にいるすべてのクルーの検体を採取し、認定された医療機関でPCR検査を行う。第2にクルーと船客として関係者やボランティアを乗せ、コロナ防止のための船客とクルーすべての行動を模擬演習する試運転航海を行う。

 第3にCDCが試運転を通じて各クルーズ船の安全とウイルス防止対応を査定して合格なら航海許可証を交付。最後に通常の船客を乗せたクルーズ開始と、CDCが最後まで監視・監督する厳しさだ。特にクルーの健康管理と船客を含めての徹底したPCR検査を重視している。

 CDCの、クルーズは狭い密閉空間で感染が容易で、しかもその検出が困難という基本理解は変わっていないようだ。運航停止令解除直前の10月末にも、全世界へのクルーズ旅行を当面控えて延期するよう国民に勧告している。

 新指令の終了期限は21年11月1日。CDCはこの指令に、9月のCLIAパネルの74項目の提言の一部を取り入れたことを認めている。

 条件付き運航指令の具体的内容はCDCの解説書に詳説されるがポイントは以下の通り。

・クルーズは最大7日間に限定されるが、感染状況に応じて短縮、延長があり得る。
・新たに乗船するクルーはPCR検査後14日の隔離を課せられる。下船時も検査を受ける。
・すべての船客は乗下船時に陸上の認定検査機関による検査を受け、結果は乗下船前に判明しなければならない。
・船上の医療体制を強化しPCR検査ができる設備と体制を確立。クルーは毎週検査を受ける。

 新指令の求める多くの要請事項やCDCへの事前通告期間を考慮すれば、実際のクルーズ再開は早くて来年2月頃と専門家は予測する。すでに年末までの航海の多くは取り消されている。いくつかの業界アンケートによる来年以降のクルーズ需要展望は明るいようだが、今回の制度改定による多大なコスト負担、予想される船客数減少という厳しい環境下でのクルーズ会社の今後の経営構造がどう変わるか注目される。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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