空の旅はどこまで安全なのか
2020.10.05 00:00
![](https://www.tjnet.co.jp/wp-content/uploads/2020/09/aircraft-cabin-5535467_640.jpg)
史上最悪の危機に直面する航空産業は、キャリア、航空機メーカー、空港に至るまで航空旅行の懸念に対処する安全キャンペーンを強化している。英フィナンシャルタイムズは以下のように報じた。
航空旅行はバスや鉄道の旅、レストラン、職場と比べ感染リスクが低いというデータがある。IATA(国際航空運送協会)の調査では1~3月に新型コロナウイルスの機内感染が疑われるケースは4件ですべて乗客から乗員に、この他に4件、パイロットからパイロットへの感染があった。
12万5000人を運んだ航空4社対象の詳細な調査では1100人の感染者が確認されたが、2次感染者は乗客1人、乗員2人だった。しかし、見知らぬ人と長時間、狭い空間に閉じ込められる旅行者が不安を感じるのは当然だ。IATA調査では65%は感染者かもしれない人の隣に座ること、42%はトイレ利用が最大の心配と答えた。
機内の空気を心配する回答者が37%いるが、専門家によると機内換気システムは有害な空気を減らす機能があり、換気率(客室の容量と同量の空気を1時間に排気する回数)は高く、機内換気時間は3~4分と短い。地上の屋内環境の換気時間は20~30分とされる。気体分子すべてが数分ごとに除去されるわけではないがリスクは少ない。
重要なのはHEPAと呼ばれるフィルターを使用していることで、コロナ危機以前に典型的な大きさのコロナウイルスのほとんどを除去するために設計された高機能の設備だ。今回、エアバスとボーイングは旅客の乗降機の際にも換気システムを稼働させておくよう通告した。
航空会社は旅客に病原菌拡散を防ぐために座席にとどまるよう要請し、移動を抑制している。ライアンエアーなどは旅客のトイレ利用に許可が必要で、多くの航空会社は食事、飲み物サービスを減らし乗員の乗客との接触を制限する。座席背もたれは口と鼻から出る飛沫を防ぐのに役立つ。
機内のソーシャルディスタンスもリスクを減らすことができるが、米国は別として中間席を空ける航空会社は少ない。EU航空安全局、米連邦航空局、国際民間航空機関(ICAO)も機内のソーシャルディスタンスを強制していない。航空会社は旅客、乗員にマスクを強制、機内清掃強化、乗機や機内の手順変更など他人との接触を減らす施策を採用した。一部航空会社や空港は大西洋線などの再開に向けてコロナ感染検査を導入する。
航空機メーカーも安全強化の研究をしている。ボーイングは付着するどんなウイルスも殺す抗菌性の塗装膜や表面材を研究中だ。これらの材料はトイレなどの設備に利用される。またスタッフが携帯して紫外線でウイルスを数秒で殺菌する道具も1~2年で利用できるようになるだろう。
機内感染リスクを100%除去することは不可能だ。1人の感染者が乗客14人に感染させた例もある。しかし、数千のフライト実績から換気システムの有効性によってリスクは低いといえる。リスクは乗客が乗務員や乗客同士で会話する時だ。接触を限定するためにできることは簡単だ。エミレーツ航空のティム・クラーク社長は言う。「私が飛行機に乗る時はマスクを着け、誰も食べていない時に食事する。できることを完全にやれば感染リスクは減る」
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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