最近の若い者は…
2020.06.01 08:00
「最近の若い者はけしからん。俺が若い頃は…」。古代エジプトの粘土板に書かれていたとかプラトンが言ったとか、語源は定かではない。それでも古今東西問わず、まことしやかに言われるのは、多くの人がそのように感じた経験があるからだろう。なにしろ息子が小学校高学年の頃、「最近の1~2年生は礼儀を知らん」と愚痴をこぼしていたくらいだ。そんな「最近の若い者」がウィラーにも入社してきた。
ウィラーでは04年から新卒採用を始めている。当時、社員数は20人くらいなのに10人採用した。スキーツアーやダイビングツアーなど、若い人たち向けの旅行商品を企画実施していた。ユーザーに最も近い感覚の社員を採用することで顧客第一主義の商品開発を行う狙いもあった。
同時に社員1人1票の権利を与えることで、新卒が一致団結すればやりたい企画が実施できるようにもした。それから代を重ね、今年の新入社員は17期目。タイプは「厚底シューズ」だそうだ。ITの進展と共に育ち、先輩たちのノウハウをうまく生かして就活した姿が、陸上で好記録を連発する厚底シューズに似ているからだと。登場してすぐイノベーションを起こしたように、ウィラーにも革命を起こしてほしいと思っている。
一方で会社にとらわれない働き方をする「最近の若い者」たちもいる。日本海縦断観光ルート・プロジェクトが主催するJapansea Academyというワークショップがある。「日本海の知恵を取り入れて暮らしを豊かにする」ことをテーマに、定期的に開催しているが、そこで知り合う人たちは実におもしろい。
全国でおむすびのワークショップなどを行う「旅するおむすび屋」を主催する菅本香菜さんは、クラウドファンディング・プロジェクトのローカルフードを担当しながら総務省の地域力創造アドバイザーも務める。
ケータリングユニット「Moca jaba」を運営する池田史さんは病院と養護施設で働く管理栄養士のお2人と活動している。池田さん自身は企画会社に勤め、そのイベントスペースで菅本さんが「スナックおむすび」というイベントを定期的に行う。別々に知り合ったのだが、おもしろいことをしている人たちはつながっているんだなぁ、と感じている。
菅本さんも池田さんも複数の仕事を掛け持ち、実に楽しそうに働いている。働き方改革が叫ばれ、ダブルワークが認められたりテレワークが一般化してきたことで、これまでにない軽やかでしなやかな働き方を実践している。
私が新卒で社会に出てきた時には想像もつかない働き方だ。社会的環境の変化もあるだろうけど、SNSの普及を通じて情報発信を自分自身でできるようになったことが実に大きく、ビジネスの単位がマスからコミュニティーに移った結果だろう。
「最近の若い者はうらやましい。俺が若い頃は…」。そんな目で新入社員を見ている。
板村康●ウィラー地方創生チームプランニング・リーダー。アパレル営業、マーケティングプランナー、幼児教室運営などを経て、09年にウィラーグループ入社。社長室でブランディング・広報などを担当し、法務、R&Dなどを経て現職。日本海縦断観光ルート・プロジェクトを担当する。
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