<PR>自然災害のリスクにどう対応するか

2020.01.06 00:00

原優二 (株)風の旅行社代表取締役社長
山下真粧子 東京海上日動火災保険(株)旅行業営業部長

世界中で狂暴化する自然災害。観光・旅行ビジネスにも甚大な被害を与えかねない。いつどこで発生してもおかしくない想定外のリスクの増大に観光産業はどう対処していったらいいのか。風の旅行社の原優二社長と東京海上日動の山下真粧子部長が意見を交わした。

山下 旅行業営業部門に異動するまで28年間、保険金支払い部門で自然災害と常に向き合ってきました。東日本大震災の際には訪れた石巻の水産加工工場で、お客さまから「目の前で従業員が何人も流された。工場を1日も早く再建するのがせめてもの手向けだ。残った従業員と震災後の人生を一歩踏み出す力が欲しい」と胸の内を明かされました。思わず目頭が熱くなった経験でした。

 どうしてもルーティンになりがちな自分の仕事が社会に必要とされ人々の生活を支えていると実感できた瞬間ですね。近年損害保険はますます重要になっています。

山下 19年は台風19号をはじめ多くの自然災害が日本列島を襲いましたが、18年も自然災害が頻発し日本各地に大きな被害をもたらしました。一連の自然災害により保険業界全体では約1兆7000億円の保険金を支払いました。当社での受付件数は東日本大震災の際の約23万件の2倍近い約42万件に達し、自然災害の被害範囲と規模が拡大傾向にあります。当社では災害対策室を設け、全社を挙げて対応しています。交通機関・観光施設などには今も保険をかけていただいており、自然災害発生時には保険金をお支払いすることも多いですが、そのような経験を通じて保険会社が観光地の復旧・復興に貢献できると改めて実感しています。

 旅行会社は台風や地震といった自然災害やテロ事件、疫病の流行などの影響を強く受けますから、リスクを回避できる保険商品を常に求めています。特に最近は台風被害のリスクを軽減できる保険商品が望まれます。たとえば鉄道が計画運休された場合。空港までの交通手段がない状況でも、空港から飛行機が飛ぶ状況で旅行会社が募集型企画旅行をツアーキャンセルすれば、全額を旅行者に返金しなければなりません。もちろん現地の地上費の支払いも発生します。
 一方、旅行者が集合場所に指定している空港に来られないことが計画運休で分かっていながらツアーを催行すれば、返金は免れるものの、果たしてそれでいいのか。お客さまに「空港まで歩いてでも来てください」などと言えるのか。旅行会社はある意味板挟みの状態です。他にも悩ましい状況はいくらでもあります。テロ事件が発生した際に現地の状況的にはツアー催行が可能なものの、お客さまが「今は行きたくない」とか「台風で自宅が浸水被害を受けて明日からの旅行に行けない」と申し出があったりした場合などです。そこを原理原則に則って取消料を支払えと迫れば、旅行業界そのものが敬遠されかねません。こうしたリスクをヘッジできる保険商品があれば助かります。

山下 どういった保険を商品化するのかはその時々の時代や社会のニーズにより異なってきます。自然災害の様子が変わり、旅行業界にとっての問題が変化していることは意識していますし、新たな商品化についての検討は前向きに行っています。

 企業努力すべき点はしっかり旅行会社として取り組んだうえで、それでも受け止めきれない突発的で巨大な自然災害リスクは保険に頼るしかありません。旅行者にとってもリスクは増大しています。ペックス運賃の運用形態の変化により予約後すぐに発券するケースも増えており、キャンセルチャージ発生リスクも大きくなりがちです。

山下 われわれも以前からキャンセル保険の商品化には力を入れています。すでにB2C向けにはANAのキャンセル保険「そらもよう」を引き受けており、たとえば悪天候で予約便が欠航になった場合のリスクに旅行者が備える手助けをしています。現在は、旅行会社の販売する旅行商品にも対応する保険の検討を進めている段階です。

旅行会社の経営を守るために

 旅行の内容が体験重視型にシフトしていることも旅行会社や旅行者のリスクを大きくしています。例えば、モンゴルでの乗馬体験は人気ですが、あぶみや腹帯が切れてお客さまが落馬してけがをすれば多額の賠償責任が生じ会社経営を揺るがしかねません。ですから旅行会社として賠償責任保険への加入は必須だし、そうでなくては怖くて旅行会社を経営していられないというのが私の実感です。登山ツアー、サイクリングツアーなども同様です。体験型を扱うなら賠償責任保険加入は必須でしょう。「ちょっとしたハイキング程度なら大丈夫」は絶対に通用しません。料理体験だって事故が起きない保証はないのですから。

山下 私自身は保険金支払いの仕事が長かったので、保険はどちらかといえばお客さまが必要を感じて加入するものという考えが強く、こちらからお勧めするのはなじまないと考えがちでした。しかし旅行業営業部門に来て認識が変わりました。保険をお勧めすることがお客さまである旅行会社を守ることになると信じられるからです。

 われわれの海外旅行保険に対する認識も同じです。お客さまには海外旅行保険加入が当社のツアー参加条件と案内しています。クレジットカードに付帯された旅行保険だけというのもお断りします。それが煩わしいと感じるお客さまもいるでしょうが、勧めないわけにはいきません。保険のコミッション収入といった問題ではなく、絶対に旅行者のためだと思えるから強く勧められるのです。

山下 旅行業界が直面する事業リスクの幅の広さに対して、旅行会社のリスクマネジメントは旅行中の事件・事故対応が中心に行われています。旅行中の事故対応のみならず、事業継続に必要な備えをしているか、旅行者に対して安全配慮義務は万全といえるかをあらためて考えていただくことが重要です。旅行者だけでなく、旅行会社自身を守っていく備えが今まで以上に必要となります。東京海上日動は旅行業界と共に新たな保険のあり方やリスクマネジメントの手法を考え、旅行業界の挑戦を支援していきたいと考えています。

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