米国市場で人気のリバークルーズ最新事情
2019.06.10 08:00

4月のトラベルウィークリー(TW)は欧州リバークルーズシーズンの開幕にあたって、船舶の供給過剰と昨年のドナウ、ライン川の歴史的な低水位による低迷により、一部で大幅な割引が見られると伝えている。同時に米国のリバークルーズの新しい動きをTWが報じている。
米国のリバークルーズの象徴は、ニューオーリンズを基点にミシシッピ川を航行する、巨大な水車型の外輪を備えた蒸気船である。アメリカン・クルーズ・ライン(ACL)は、全長90m、4デッキ、定員150人のクイーン・オブ・ザ・ミシシッピなど4隻の外輪船を有し、ミシシッピ川以外にも、オハイオ、スネーク、コロンビアなど河川クルーズを運航する。ライバルのアメリカン・クイーン・スチームボート・カンパニー(AQSC)は、世界最大といわれる蒸気船アメリカン・クイーン(全長127m、6デッキ、定員436人)ほか3隻の蒸気船を運航する。ともに内装は重厚なヴィクトリア朝様式の豪華客船で、マーク・トウェイン、南北戦争、バーボンカントリー、ブルーグラスミュージックなどゆかりの都市を訪ねる。
この伝統的蒸気船に加えて、ACLは欧州のリバークルーズ船に匹敵する近代的な新造船5隻の投入を発表した。すでに18年にアメリカン・ソング(全長105m、4デッキ、バルコニー付、定員190人)が就航し、販売は好調である。第2船アメリカン・ハーモニーは今年、第3船アメリカン・ジャズは20年の就航予定だ。
一方、AQSCは既存のヴィクトリー・クルーズ・ラインズを買収し、ヴィクトリーⅠとⅡ(各定員202人)の2船を、これまでの国内河川ではなく、五大湖、カナダ、東海岸沿岸および海洋クルーズへとデスティネーションを拡大する。
両社は、米国には海外クルーズのための面倒な航空機移動を好まず、医療対応や安全性を懸念し国内にとどまる高齢者も多く、国内リバークルーズの需要は大きいと主張するが、以前から専門家が指摘するのは、欧州の近代的な豪華客船に比べて料金が割高なことである。1つの理由は1920年に制定された商船法(ジョーンズ法)が、米国内の海上船舶輸送について、米国で建造された米国籍の船で一定数の乗組員が米国国籍であることを定めており、安い人件費を活用する欧州クルーズより競争力が低いと分析している。
また、ACLとAQSCのこの動きの背景には、ヴァイキング・クルーズが米国へ進出する情報があった。欧州で30隻のリバークルーズを運営する同社は、17年にニューオーリンズをホームポートにミシシッピクルーズに300人定員の2隻、ジョーンズ法に適合した新造船を就航させ、さらに増船し計6隻を投入する計画を15年3月に発表した。しかし同社は17年12月、経済的理由により計画の中断を公にしている。
欧州ではTUI参入
米国のリバークルーズはこれまでACL、AQSCの寡占といわれたが、ヴァイキングの今後の動きも含め、ACL社長はこれから本当の競合が始まると述べている。なお、欧州では今年もヴァイキング2隻、アマウォーターウェイズ3隻の新造船のほか、欧州最大の旅行会社TUIが3隻を購入し、来年リバークルーズに参入すると伝えられる。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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