ようこそ観光産業へ、新入社員諸君に贈る言葉
2019.05.06 08:00
今年も多くの若者たちが夢を抱いて観光産業を就職先に選んでくれた。観光産業は彼らが夢を膨らませ続けられる場でなければならないし、それは新入社員自身が築き上げていくべきものでもある。ようこそ観光産業へ――。これから共に未来を目指す若者たちへ、われわれはどのような思いを託そうとしているのか。
学生優位の売り手市場の採用状況のなか、各企業は人材の量的確保に苦心しながらも、採用できた人材の質的なレベルに対しては満足度を高めている。リクルートキャリア「就職白書2019」によると、19年春入社の新卒採用で計画通りの採用ができたとする企業は前年比0.6ポイント減の47.0%と2年連続で減少した。一方で、入社予定者に対する企業の満足度は「非常に満足」「どちらかというと満足」を合わせて60.7%となり、ここ数年低下を続けていた満足度が1.6%ポイント増とプラスに転じた。
このように全産業の採用状況は、人材の量的確保の難しさを示しているが、観光産業を構成する旅行、航空、鉄道、ホテルの各分野の主要企業は人材の質的レベルの維持だけでなく、量的確保にも積極的に取り組んでいる。
本誌はこのほど、観光産業の主要企業を対象に、19年4月の採用状況を尋ねるアンケートを行った。回答は21社(旅行8社、航空3社、鉄道4社、ホテル6社)。このうち19年4月の新入社員として前年4月より多くの新入社員を迎え入れたのは約7割の14社で、減少したのは6社。また19年に前年より多くの人材を採用し、来年(20年4月)も2年連続の増員を計画している企業が6社あった。なお来年の計画について、最も多かった回答は「今年並み」とする9社で、「増やす」が8社で続いた。「減少」は1社、「未定」が3社だった。
19年4月の採用が前年を上回ったのは、鉄道では4社全部で、ホテルも6社中4社が増加している。アパホテルは18年の281人に対し19年は333人と採用人数を19%増やしており、来年も増員を計画している。会社を挙げて人材確保の取り組みを強化しており、リクルーターに当たる先輩社員を主要都市に配置して学生をフォローする態勢を整えた。若手社員や内定者には後輩学生の紹介を依頼。「リファラルリクルーティングを強化した」(同社)という。
19年4月の採用活動に関して、「売り手市場といわれるなかで工夫した点は?」の質問に対する回答で最も多かったのがインターンシップの活用で、4割近い8社がインターンシップの活用に言及している。日本旅行は「インターンシップの開催数を増やし、より多くの学生に自社の業務体験をしてもらった」としている。また別の旅行会社は「ツアー企画体験のインターンシップを、東京、大阪で夏季、冬季に十数回開催し、業務体験と先輩社員との交流を行い、会社への志望度アップを図った。その結果、入社の半数がインターンシップ参加者となった」という。
旅行会社以外に、鉄道会社からは「インターンシップを開催し学生のキャリア選択を支援した」や「インターンシップの内容充実と実施回数の増加」を挙げる回答や、ホテルからも「インターンシップ実施回数の増加」という回答が見られた。
インターンシップではないが、「働いている先輩社員に協力してもらい、ホームページなどでは分からない仕事のやりがい等を紹介した」(旅行会社)という回答もあり、観光産業ではいかに仕事の内容を実体験(インターンシップ)させるか、あるいは理解させるかがポイントのようだ。
内定の辞退は大きな課題となっている。特にホテルからは「業界の定まっていない学生が増え、内定後の辞退が急増している」や「内々定辞退率が高くなっている」といった声が上がる。内定辞退の対策としては「先輩社員とのメンター制度や職場見学、懇親会等の内定者向けイベント実施を増やした。また、従来の6月期のみならず、夏・秋・冬にも選考を実施した」(東日本旅客鉄道)、「追加募集の実施(10月)」(ホテル)といった工夫が挙げられる。
目立つ外国人採用や語学重視
観光産業各社が19年の採用に当たって人材に求めた要素は、業種や企業特性によりさまざまだが、比較的多く見られたのが語学力やコミュケーション能力の高さ、あるいは外国人を含むダイバーシティを実現できる人材だった。
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