『巡礼ビジネス』 持続性に疑問禁じ得ず

2019.01.21 15:59

岡本健著/KADOKAWA刊/860円+税

 「わあ、ラピュタみたい」
 「千と千尋と一緒だ!」
 観光地でこれを聞くと、ついつい渋い顔になってしまいがち。ええい、なんでもジブリにたとえるんじゃない。こっちがオリジナルだから!

 とはいえ、アンコール遺跡も九フン(フン=にんべんに分)も人気の一端はアニメが担っていることは間違いない。日本でいうと、『らき☆すた』の舞台・鷺宮、『ガールズ&パンツァー』の大洗などが「聖地」として人気を集めたのは記憶に新しい。

 本書は、アニメやゲームに代表されるポップカルチャーの「聖地巡礼」について、さまざまな事例をひもときつつ、これをビジネスとして展開していくためのヒントを探る1冊だ。

 コンテンツをきっかけに地元の良さを紹介したり、あるいは旅行者の発信を促したり、工夫と仕掛けによってビジネス化していく「コンテンツツーリズム」の可能性は非常によくわかる。わかるのだけれども、なんだかやっぱり、その持続性について考えてしまう。『ガールズ&パンツァー』がいかに優れていても、その寿命は何年あるだろうか。また、近頃よく見る自治体とコラボしたアニメ作品なども、安易さが気になる作品がある。さらに、自力でネタを発掘したいオタクたちが巡礼ビジネスでお膳立てされた観光に乗っかるのかな、という疑問もある。そもそも情報に飢えているインバウンドには有力な手法のひとつではあろうが。

 ちなみにその辺、京都は乗っかるのがうまい。『刀剣乱舞』ブームに乗って4つの神社が「御朱印めぐり」企画を立ち上げ、北野天満宮も特別展を開催。原作イラストの掲示もほどほどに、うまく観光に誘導していた。やっぱり、京都は年季が違うなあ、なんて感心したのだった。巡礼ビジネス、個人的にはまだまだ発展途上だと思う。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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