『民芸お菓子』 用の美へのこだわりここにも
2020.02.03 00:00

おいしそう、かつ旅ガイドとしてもお役立ちな本をご紹介しよう。
大正から昭和にかけて盛んに呼びかけられた「民芸運動」。柳宗悦らが提唱した生活文化運動で、ふつうの人々の生活になじんだ日用品に「用の美」を見いだそう、という動きだ。なんとなーく、お茶碗や汁碗みたいな食器類、染め物や織物などの布類、戸棚や椅子のような木工品、というイメージがあるけれども、実はお菓子にも民芸の豊かな世界は広がっているのだった。
本書は菓子研究家で全国の民芸にも精通する福田里香さんが「民芸」をキーワードに全国のお菓子を写真と文章で紹介したビジュアルガイドだ。
かーわーいーいー。
ページを繰るごとにそう言いたくなるお菓子が並ぶ。
民芸ファンにはおなじみの民芸品店、光原社(盛岡)の名物くるみクッキーからはじまって、パッケージに型絵染めの絵柄が使われた栗水ようかん(小布施)、木彫りの“うそ”を入れたうその餅(福岡)、庶民の絵画・大津絵をテーマにした大津画落雁(滋賀)などなど、お菓子本体はもちろん、パッケージやその意味に民芸の心が込められた全国のお菓子たち。派手な色や形ではないけれど、形はシンプル、色合いも和な目に優しい(?)お菓子がずらりと並んで楽しい。
青柳ういろう(名古屋)のパッケージを手掛けたのが柳宗理(柳宗悦の息子でプロダクトデザイナー)、十万石まんじゅう(埼玉)の題字が棟方志功だとか、おなじみのお菓子にはあの人が関わっていたのか、なんて驚きもある。民芸的な技法が使われたお菓子など、菓子研究家ならではの記事も楽しい。
読了後はいつものお菓子も味わいが深まりそう。これからは包み紙も大事にとっとかなきゃ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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