次期基本計画への視点 訪日6000万人時代の要諦

2025.03.31 00:00

(C)iStock.com/CHUNYIP WONG

第4次観光立国推進基本計画の最終年度を迎える今年、政府は次期計画の検討に着手する。現計画はコロナ禍前の水準に戻すことを目指して目標が定められ、早期に達成できた項目がある一方で、目標にほど遠い項目もある。訪日6000万人を目指して立案される次期計画では、どのような観光産業の姿が描かれるべきなのか。

 第4次観光立国推進基本計画は23年度から開始し、25年度を最終年度とする3カ年計画だ。掲げた目標のうち、インバウンド関連は最終年度を待たず24年末までに達成してしまったものがある。訪日外国人旅行者が想定以上に伸び、現行計画全体が順調に進んでいるイメージはある。

 しかし、観光庁の秡川直也長官は「いまの3カ年計画は22年の岸田政権時に策定したもの。当時、コロナ禍は一定程度収まったが、外国人旅行者が日本に来てくれるか分からない面もあり、目標としては保守的というか、19年の水準に戻すことを目指したものになっている」と1月の会見で認めている。つまり、意欲的な目標を掲げたわけではなく、もともとが守りの目標設定だ。そう考えると、ここまでの結果が満足すべきレベルなのか疑問が残る。最終年度にもう一段の頑張りが必要な課題もある。

 好調だったインバウンドに関しても、旅行者数や旅行消費額、1人当たりの消費単価といった数量面の目標こそ達成している一方で、地方への需要分散という構造改革には苦戦している。基本計画の3本柱であるインバウンド回復、国内交流拡大、持続可能な観光地域づくりのうち、インバウンドを除く他の2つに関しては、むしろ目標達成が厳しいと感じる面もある。25年度末を迎えた時点で、次期計画に積み残されることになりそうな課題は少なくなさそうだ。

 現行の基本計画が掲げた具体的な目標は全部で9項目。インバウンド回復で5つ、国内交流拡大として2つ、持続可能な観光地域づくりで1つ、インバウンド回復の分野に組み込まれているものの、いずれにも属さない日本人海外旅行の目標を加えて合計9つだ。

 そのうちインバウンド関連は5項目中、4項目が24年末までに目標を達成している。24年の訪日外国人旅行者数は前年から47.1%も伸び、過去最高の3687万人となった。基本計画が25年目標とした「19年水準(3188万人)超え」を果たした。25年1月も前年同期比40.6%増の378.1万人となり、単月の過去最高を記録。旅行者数はすでに回復段階を過去のものとして、新たなステージに進もうとしている。

 訪日外国人旅行消費額については早期達成目標として5兆円が掲げられていた。これも達成済みで、23年に5兆3065億円に達している。24年は旅行者数の大幅増に伴い消費額も69.1%伸び、8兆1395億円まで急拡大。目標の1.6倍以上に達した。旅行者数と並んで消費額の成長を支えた単価は、円安の追い風を受け、23年時点ですでに21万2800円と目標の20万円を上回り、24年はさらに22万7200円まで伸びた。

 もう1つ、アジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合の目標として、「アジア最大の開催国(アジア主要国シェア3割以上)」が設定されている。ICCA(国際会議協会)の統計によると、23年に日本でアジアで最多となる363件の国際会議が開催され、主要国(日本、韓国、オーストラリア、中国、シンガポール)の計1156件に占める割合は31.4%となり、目標をクリアした。

 インバウンド関連のうち、24年末時点で唯一未達だったのが、訪日外国人旅行者1人当たりの地方部宿泊数を25年に2泊まで引き上げるという目標だ。宿泊旅行統計調査によると、19年に1.35泊で、現計画がスタートした23年には1.34泊と19年より減少し、24年はわずかに持ち直したものの1.36泊どまり。目標にはほど遠く、3大都市圏の3.08泊にも大きく引き離されたままだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル25年3月31日号で】

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