変化への対応遅れ…再建かなわずトーマスクック破綻
2019.09.30 01:00

経営不振にあえいでいた英トーマスクックが9月23日、ロンドンの裁判所に破産を申請した。近年、多額の赤字と負債を抱え、経営陣の刷新、商品群や販売網の見直し、オンライン販売強化など、さまざまな施策を繰り出してきたが改善には至らず、今年に入り株価が暴落。事業維持に必要としていた追加融資を得られず、強制清算を余儀なくされた。
トーマスクック航空を含むグループ内のすべての英国企業が同日、取引を停止した。英国のツアー販売業者は弁済制度「ATOL」のライセンス取得を義務付けられているため、フライトを含む旅行商品の購入者は代金の弁済と帰国が保証される。海外にいた対象顧客は約15万人に上り、英国民間航空局は帰国のため2週間で1000便を手配するなど、24時間体制で対応に追われた。
経営不振が顕著となったのは、オンライン化など事業環境や市場動向が大きく変化した2010年ごろからだ。12年に7.8億ポンド(約1037億円)の負債を抱えると経営陣を刷新し、主力の英国事業のてこ入れとコスト削減に取り組んだ。ただ、ツアーを店頭で販売する伝統的なスタイルからなかなか脱却できず、店舗網を拡大したりと施策には疑問符が付いていた。エクスペディア超えを標榜して設立した新会社「The OTA」も壁にぶつかった。
対照的に好業績を維持するのが、トーマスクックとしのぎを削ってきたTUIだ。予約から旅行後の各局面にオンラインサービスを取り入れ、ツアーでは高付加価値型を強化。戦略が異なる。
1841年に創業し、旅行業の礎を築いたトーマスクックの破綻は世界の旅行業界に大きな衝撃を与えた。と同時に、そのあり方に課題を突き付けている。
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