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概要

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TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 98 あらき・あつみ●長崎県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日産自動車入社。海外マーケティング業務を担当。91年IT &マーケティングサービス会社のアランを創業。04年世界オプショナルツアー予約「Alan1.net」(現VELTRA.com)で旅行業に参入。荒木篤実ベルトラ代表取締役会長COLUMN市場拡大の鍵は柔軟な発想ンラインによるビジネスの活性化を考える際、避けて通れないのが、オフラインビジネスとの「連携(棲み分け)」である。 90年代後半は、ウェブで告知・宣伝し、ユーザーを自社サイトに誘導したうえで、最後は実店舗に来てもらう、という手法が中心だった。そこで、まずポータルサイトへのバナー広告出稿が流行り、次にターゲットがセグメントされたメールマガジンの導入、そして2000年代になると、利用頻度の高いメディアとしてSNS(ソーシャルメディア)への広告出稿も増加した。 このようにオンラインは、主に告知・集客といった広告・販促に向いているとされてきた。いわゆる、O2O(Online to Offline)であり、90年代の「クリック&モルタル(click and mortar)」とほぼ同義である。一方、最初から無店舗のアマゾンのようなEC 専門企業も大きく成長した。 2010年代になると、先に物品をどこかの店舗で実際に見ておいてもらい、その後、自社のオンラインに誘客という、従来とは逆のアプローチが家電量販店を筆頭に出現した。この場合、オンラインでのプレゼンスがより重要になるため、マーケティング戦略も変わってくる。 一方、EC専門のアマゾンが世界中で成長してきたのは、単に品揃えや取り扱いジャンルの拡大だけではなく、サービスそのもの、つまり発送スピード/コストにも注目したからだ。すなわち、ユーザー目線でのビジネス改革だったことが大きな成功要因である。 これは、ネットでの勝ち組が、物流インフラの劇的改善により競争優位をさらに強固にした好例と言えるだろう。無店舗のネットビジネスといえども、ネットだけではサービスが完結しない場合もあるのだ(音楽などのデジタルコンテンツ除く)。 自社のビジネスを成長させていくために、オンラインをどうやって活用すればいいのか。ユーザー目線でいえば、まず商品・サービスを比較しやすいこと、次にプッシュセールされる心配がないことがネット購入のメリットである。一方、デメリットとしては、ウェブサイトに自分が必要とする情報がない場合、メールで質問して、あとは待つしかない、という難点があった。だが、最近ではリアルタイムのチャットサービスの導入などにより、レスポンスを改善する会社も多いようだ。非対面というネットの弱点や課題を解決する手法も、次第に確立されつつあるといえる。 これらの事例からわかることは、オンラインだから、オフラインだからと、あまり手法やその効用を自らの先入観で決めつけてしまわないことが肝要、ということではないだろうか。オンラインの長所であるスピード、検索性、気軽さなどに、オフラインでの安心感、安定感、人とのふれあいなどが加味されれば、市場を拡大していくことはまだ十分に可能なはずだ。 海外渡航自由化50周年を迎えた今、オンラインもすでに20年の歴史を持つ。日本のネットビジネスのパイオニアで、MIT メディアラボ所長でもある伊藤穣一氏は、同氏が創業したデジタルガレージ社の20周年記念パーティーで、「まだまだネットの活用できる分野は数多く残されている」と皆を鼓舞したそうだ。今後のビジネス成長は、いかにタイムリーかつ的確にオンラインを活用できるか次第ではないだろうか。vol.04(次回は7月7日号に掲載します)オ