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概要

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外客誘致担当者訪問TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 97事業データvol.イトグリーンやピンクのポップなカラーデザインをはじめ、秋田杉の曲げわっぱや福島の会津塗りなどの伝統工芸まで多彩な弁当箱が店内にディスプレイされている。ふたが汁物碗になるもの、忍者や京舞妓をモチーフにしたもの、さらにはアジア各地から買い付けた弁当箱もある。風呂敷やキッチン用品、文房具などを含めて約800点の商品をそろえ、店舗とオンラインで販売する。1000~8000円の弁当箱が月に1000~1500個売れる。 ベルトランさんと日本の弁当箱との出会いは、フランスの雑誌で目にしたのがきっかけだった。「(日本の)弁当箱は小さすぎる。日本でしか売れない」と、販売を手がけることに反対の声もあったが、当時は弁当箱専門店がなく、世界的な景気停滞の影響で節約志向から外食を控える傾向があり、「経済的かつ健康的でもあり、見た目に美しい日本の弁当文化は世界各国の需要を取り込める」と商機を見いだした。 会社設立の翌年から販売が伸びた。東日本大震災後には、「日本を助けたい」「日本の経済活性化に協力したい」という人々から、インターネット経由で注文が殺到した。日本の弁当箱が広がり、フランス人のランチスタイルが変化したというが、たとえば「仕切りのある二段重にしてから、前の晩のおかずの残りなど数種類を少しずつ入れ、見た目に気を使うようになった」と話す。 オンラインショップには現在、「松花堂弁当のような形の弁当箱がほしい」といった声とともに、フランス、英国、モルディブ、インド、キューバ、米国など世界各国のホテルやレストランから大口の注文が届く。幕の内弁当や松花堂弁当のように四季折々の食材を美しく並べる日本の弁当文化は、世界遺産に登録された和食とともに、世界中のレストランやホテルから熱い視線を集める。弁当箱で料理を提供したり、デリバリーに使うなど、欧米のレストランやホテルで弁当箱の利用が進む。◆ 訪日観光客の多い京都に構える店舗では、ディスプレイに海外から取り寄せた装飾品を使う。「商品が日本の物なので、内装は和風になりすぎず外国人観光客が入りやすい雰囲気を心がけている」ためだ。販売には商品説明が最も重要になるため、スタッフは全員英語かフランス語での接客が可能。来店客とのコミュニケーションを最優先し、旅行の話題に触れることもある。また、導入費用や手数料を抑制できるスマートフォンを使ったクレジットカード決済システムを導入し、利便性を高めた。 SNS を活用して1万5000人にニュースレターを配信しているほか、年1回コンテストを開催し、海外の消費者にもアピールを欠かさない。5月には、4万人のホテルやレストランのバイヤーが来場したシカゴのレストラン見本市「NRA ショー」に出展。世界を舞台に、日本の弁当箱文化の普及に奔走している。事業概要?08年にインターネットでフランス語版の弁当箱専門店オンラインショップをオープン。10年に英語版、11年に日本語版サイトを開設し、12年4月に京都市中京区に念願の実店舗を開業。販売実績?弁当箱は年間約1万5000個。多い月は1500個売れる。顧客平均単価は約5万円。売上高の構成比は、インターネット販売の個人客が50%、同卸しが35%、実店舗25%。スタッフ数?7人(うちフランス駐在者1人)。別途、店頭スタッフとして4人がいる。主要顧客?昨年からオーストラリアの個人客が増え、全体の40%をオーストラリアが占める。次いでフランス、米国、カナダなど欧米の注文が多い。地域で嗜好が異なり、ヨーロッパでは紫色のモダンなデザインの弁当箱や、こけしなどキャラクターをモチーフにしたキュートな弁当箱が人気。ラ弁当ブームの火付け役京都から世界へ文化ごと発信日本の弁当箱を、オンラインで年間3万個あまり販売するBento&co。海外で弁当ブームをつくったフランス人起業家が京都の自社店舗で行う外国人客への配慮とは。トマ・ベルトランさんBERTRAND代表70Thomas BERTRAND●フランス出身。03年に京都大学留学、04年仏グルノーブル政治学院卒業後に京都を再訪し、暮らし始める。08年弁当箱専門店「Bento&co」設立。日本アニメのファン。取材・文/望月弓子(次回は7月14日号に掲載します)