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概要

TJ20140616_BN

TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 95購買パワー獲得術●ツアー後半への備え帰国日が近いほど購買需要が高いのが、賞味期限の短い菓子や食品類。品切れにならないよう、仕入れ管理はしっかりと。小さく軽い物も喜ばれる。Point 1 間際買い商品を見極めるツアー前半でいったん落ち着いた購買意欲を呼び戻すには、土産リストにはない物がターゲット。日用品ながら高品質の日本製品は効果あり。Point 2 購買意欲を再び喚起する100均で宋さんが購入した充電池。日本製の品質の高さをあえて見せることが、衝動買いを引き出すきっかけに 私自身、中国企業の依頼で慰安を兼ねた研修旅行を企画提案し、訪日の際にアテンドしている。そのうち年に数回は、1週間の訪日ツアーのすべての行程にお付き合いすることもある。この場合、上記のようなことが顕著に現れる。中国人客というと「爆買い」のイメージがあるが、現実にはツアー開始から3日目くらいで購買意欲が落ち着いてくる。人によっては「もう十分」という人もいる。よって、4日目くらいからはアテンドの腕の見せどころとなる。私は常に実験とも呼べるような、購買意欲を刺激するさまざまな工夫をしているが、そのひとつが100円均一ショップ、通称「100均」だ。 先日、移動中のバスの中で、宋さん夫婦が道中にスマートフォン用の充電池を失くしてしまったことに気がついた。そこでちょうど街道沿いにあった100均に立ち寄った。宋さん夫妻を案内し、充電池2本と充電器を買いそろえた。税抜きで合計300円。それをバスの中で皆に見せると、「良いアイデアだ」という人もいれば、「そんなのすぐに壊れるに決まってる」という人もいた。しばらくバスの中で充電すると、本当に使えることがわかった。翌日も宋さんがそれを使っていると、「本当に100円で繰り返し充電ができるのか」「これは安い。中国では無理だ」という声に変わってくる。 実は私は何かにつけて100均に立ち寄るようにしている。諸外国にも類似店があるが、「100均は粗悪品が多い」というイメージがある。しかし、日本は安いうえに実用にしっかり耐えるものばかりだ。それを実感してもらう狙いがある。自分たちが日頃よく使う日用品と同じ物で、しかもほぼ同じ値段の商品に触れてみると、初めて日本製の品質との違いが理解できるのだ。 この効果は抜群で、「やはり買うなら日本製」と購買意欲が高まり、その後の買い物に大きな刺激を与えることになる。するとツアーの後半では各自が持参した土産リストにはない、いわゆる衝動買いが始まる。 もうひとつ大事なポイントがある。それは特にツアーの後半になると、店や施設の語学力が物を言うということだ。先日あるツアー客をお台場のヴィーナスフォートにお連れした。平日の昼間にもかかわらず、かなり多くの団体客が来ていて少々驚いた。別の団体ツアーの中国人ガイドに立ち寄った理由を尋ねると、「ヴィーナスフォートなら客を自由にできるから」だと言う。インフォメーションスタッフの語学力が高いため、客の買い物に通訳として付き添わなくてもよく楽だという。 旅行中、毎日朝から晩まで通訳していれば疲れるのは当然だ。店舗のなかには語学力がなくても何とかなっているという人がいるが、多くの場合はツアーガイドの通訳があってこそ成り立っており、それが行き渡らない時に売り上げは落ちる。これは意外に見逃されている点だ。より安定した売り上げを確保するには、やはり語学対応の向上は避けて通ることはできない。さいとう・しげかず●オリエンタルランド、運営コンサルタント会社を経て、03年レジャーサービス研究所発足に伴い所長就任。以来、中国15省の都市で販売サービス、運営管理の研修・セミナーを実施。09年にレジャーサービス研究所を独立させるとともに、上海勒訊企業管理咨詢有限公司を設立。NPO 法人日中ビジネスネットワークの講師。衝動買い呼び込む100均グッズ(次回は7月14日号に掲載します)