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概要

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たがわ・ひろみ●1948年生まれ。71年慶應義塾大学商学部卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。海外旅行営業部次長、川崎支店長などを歴任。00年取締役、02年常務取締役、05年専務取締役を経て、08年6月から現職。今年6月末に代表取締役会長に就任予定。Profi leてリアルな旅行に出かけない人が多い。海外旅行の魅力を集中的にPRすることが大事だ。海外旅行は未知へのチャレンジという意義もある。昔と違い世界の隅々を知ることが容易になった。世界の歴史を知ることは日本を振り返ることにもつながる。キーワードは「学び」だ。学生諸君はアドベンチャーの気概を忘れず、悩んだら旅に出るくらいの気持ちでいてほしいと啓蒙していきたい。 これまでの海外旅行は行くことが目的になっていた。これからは単なる目的ではなく、いろいろなことを楽しむための手段になるだろう。それとともに旅行に対するニーズはより多様化する。そのため、新たな旅の需要創出にも取り組む必要がある。たとえば、ユニバーサルツーリズムの観点から、高齢者、乳幼児、障がいのある人が容易に海外に行けるようにする環境整備も大事だ。体力的な理由や一人参加への不安など、旅行への参加を躊躇していた高齢者の方でも参加しやすい、ゆったりとしたスローな「ゆとり旅」の需要は確実に増える。バリアフリーなツアー造成などが今後ますます必要になる。 スポーツでの交流促進も大事だ。20年東京オリンピック・パラリンピック開催もあり、スポーツツーリズムが急速に脚光を浴びさまざまな取り組みが進むが、スポーツ目的での海外旅行はまだ少ない。海外の雄大な自然の中で楽しむスポーツの魅力をもっとPR する必要がある。 富裕層に向けたクルーズも伸びるだろう。JR 九州「ななつ星」のように値段が高くても付加価値の高い旅を消費者は求める傾向がある。JTB もロイヤルロード銀座事業部という富裕層向け店舗があるが、クルーズ人気は高い。日本ではまだまだクルーズ人口は少なく、成長が期待できる分野だ。 海外旅行の主流であった海外パッケージツアーにおいては、従来型ツアーとFIT の中間型商品への進化が進む。JTB は今年度からパッケージツアーの安心感とFIT の自由度を両立した商品や、FITでありながらパッケージツアーの現地サービスが提供される商品を展開、手ごたえを感じている。従来型のパッケージという形態に捉われない商品の展開で、新たな需要を作り出す必要がある。 JTBの強みは、世界最大のDMCとして交流文化をプロデュースしている点だ。オンライン販売で大きなシェアを持つ世界的企業は存在するが、世界規模で展開し、現地での周遊型旅行やMICE などをプロデュースする旅行会社はない。JTB は日本を中心とする「スター型」から、世界全体で最適を追求する「ネットワーク型」企業グループを目指している。これまで海外拠点は海外旅行をする日本人客対応が中心だったが、どの拠点も等しく相互の接続関係を持つ。世界発・世界着という、世界全体での最適を形成する拠点網を形成している。 特にアジアでは、グローバル企業の進出やグローバル展開を目指す地元企業の成長による競合が激化している。そのようななかで、JTB グループは海外企業のインセンティブ、従業員研修旅行、国際会議、学会参加、修学旅行、語学旅行などに取り組んでいる。海外進出する日本企業は今後確実に増える。そのサポートをして、よりよい環境を提供することで渡航者数を増やすことも必要だ。 最近はインターネット販売の比率が急速に高まり、ネットに特化する旅行会社も出てきている。チケットや宿泊手配の利便性ではネットにかなわないが、海外旅行ではいまだ店頭に相談に訪れる方が多い。私が理事を務めるWTTC(世界旅行ツーリズム協議会)の議論でも、ネット予約が圧倒的過半数になることはないと言われる。デジタルの利便性とアナログの関係を組み合わせながら、リアル店舗、電話、ネットなどあらゆるタッチポイントでお客様に対応する販売ネットワークの再構築を図る。 100年以上にわたりさまざまな国のお客様をお迎えしてきた歴史により、JTB には“おもてなしの精神”がDNAに刻まれている。文化、交流、経済、教育、健康の「旅の5つの力」を活用し、アウトバウンドツーリズム拡大に積極的に取り組みたい。旅のもつ5つの力を活用TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 83次の半世紀へPart 3 ● 展望|特|集|