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概要

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 JTB グループは12年に100年を迎えた。今年は海外旅行自由化50周年だが、JTBにとっては後半の半世紀にあたる。われわれはこれまで海外旅行市場拡大を追い求めてきた。ツーリズム産業が担うのは人流だけでない。人が動く場所には必ず物も動く。双方向の人的交流を担うだけでなく、産品などの物流活性化を行うことで、ツーリズム産業が海外との交流促進を担うことが、日本の国際化をもたらし、国の豊かさに貢献したと考えている。 1964年に東京五輪、70年に大阪万博が開催され、国内で人流と物流の活性化が始まった。万博で海外旅行に興味を持った人も多く、当時入社したばかりの私の周りでも海外旅行市場を拡大していこうという機運が高まった。その後バルク運賃、ジャンボジェット登場により、海外旅行ブームが本格化した。JTBでも68年に海外旅行ブランド「ルック」を立ち上げる。パッケージツアーの誕生で、海外に手軽に行くことが可能になった。 当時海外へ行くには価格のハードルもあったが、言葉のハードルも大きかった。これらのハードルがバルク運賃、パッケージツアーの誕生で下がったことが海外旅行者数の大躍進につながった。日本のパッケージ旅行は「安心して海外を回れます」が代名詞となるが、言葉だけの問題でなく、「安全・安心」に海外旅行できるのは重要なポイントだ。先人たちは常にそのことを意識して海外パッケージツアーを作っていた。そして、そのDNA は今もJTBグループの中に深く受け継がれている。 70年代後半のオイルショック後は、お客様ニーズの多様化に伴いツアーの高品質化やフリー商品の登場などで商品カテゴリーを拡大させた。90年に日本人の海外旅行者数が1000万人を超え、FIT化が加速し、格安航空券の登場がそれに拍車をかけた。90年代は毎年約100万人単位で増えていき、2000年には1800万人台まで増えたが、残念ながら2000万人に到達できていない。テロやSARS などの影響も大きかったとはいえ、00年以降、市場の拡大基調が止まってしまった。海外旅行はどうしても為替や政情、天災などの影響を受けやすいが、結果的に市場拡大できていないことは残念であり、状況を打破していかねばならないと思っている。 では、海外旅行者数2000万人を目指す上で、何に取り組む必要があるのか。まずは地方の出国率を上げなくてはならない。必要条件は、現時点で首都圏などの大都市圏と比べて格段に低い、地方の出国率を高めることだ。地方空港からのチャーター便の運航促進やLCCの就航によって、地方空港を活性化していく政策が必要だ。 海外旅行離れが叫ばれる若年層にも働きかけないといけない。海外旅行自由化の恩恵を一番に受けた団塊層を中心とする熟年層は、旅行へ出かけること自体が生活の一部となっている人が多いが、若年層はパソコンやモバイル端末を軸に生活してい旅行は目的から手段へツーリズムは進化を止めない田川博己(JTB代表取締役社長)ビジネスの未来TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 82