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概要

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うしば・はるお●日本航空で主に事業計画、国際旅客マーケティングを担当、05年退職。同年から現職のほか、航空経営研究所の副所長を務める。また、海外旅行流通・航空事業の情報収集と研究を行う「TD勉強会」を組織。Profi le30002500200015001000500(百万人)(年)01995 2000 05 10 15 20 25 30 32欧州アジア太平洋中東北米中南米アフリカ●世界の国際線旅客数※ICAO民間航空統計(95~12年実績)をベースに、エアバス長期需要予測の路線別需要増率を援用して13 ~ 32年までを推計 当然、航空会社のビジネスモデルも大きく変化する。格安運賃のLCC(ローコストキャリア)は、短距離から長距離路線に進出してバジェットツーリストの「脚」となる。現在の世界のLCC シェア約25%が32年には50%を超す勢いだ。東南アジア域内はすでに60%近く、これがどこまで伸長するか興味深い。ともあれ、LCC のシェア拡大は老舗のFSA(フルサービスエアライン)に、ますます大きな影響を与える。LCC とFSA との競争が激化する結果、双方が相手のベストプラクティスを取り入れ、両者の境界線は次第に消滅するだろう。20年後には、LCC とFSA を区分する意味などなくなり、言葉自体すらなくなってしまうこともあり得る。 人気の観光地では、宿泊施設の建設ラッシュが始まる。加えて、今はやりのシェアリングエコノミーによる個人が保有する住居の一部や別荘の相対の貸し借りが大幅に拡大すると予想される。シェアリング市場でオンライン予約のプラットフォームを提供するエアビーアンドビーなどの仲介事業者が増加して、既存の宿泊施設のビジネスに大きな影響を与えるかもしれない。航空運送業界と同様、宿泊業界でも新規参入者が伝統的事業者に競争を仕掛ける図式だ。地上宿泊施設を不要とするオールインクルーシブのオーシャンクルーズやリバークルーズ市場も飛躍的に増加するだろう。 基本的に営利の宿泊施設をあまり必要としないVFR(Visit Friends and Relatives、友人・親族訪問)市場が拡大する。世界を股にかけて移動する国際留学生(現在およそ400万人)や国際出稼ぎ労働者(数千万人といわれる)の増加が、VFR 市場拡大のドライバーだ。世界各国の査証規制緩和が触媒となる。もうひとつ忘れてならないのはメディカルツーリズムとマルチ世代家族旅行の台頭である。海外の安価もしくは高度先進の医療サービスを求める患者がすでに世界を移動し始めている。健康診断や軽度治療の場合は、付き添いの同伴者と一緒に観光まで楽しんでしまう医療観光である。これらが現在、世界のアウトバウンド市場の30%弱を占めるが、20年後にも大きな存在感を持っていることだろう。 また、人口増加とともに平均寿命も延びる(健康寿命も延びる)結果、世界は徐々に長寿社会から高齢社会と進み、祖父母+両親+子供(孫)の三世代家族旅行が一般的となる。そして、宇宙旅行も富裕層から徐々に普及していく。 旅行者も変化する。インターネットに慣れ親しんで育ったミレニアム世代(80 ~ 00年誕生世代)の年齢が、32年頃には30~50歳に成長し、アウトバウンドの中核を成す。デジタル世代とも呼ばれる彼らは、スマホの携行はもちろんウェアラブルも身につけて、ネットワークに常時接続。自分のパーソナリティーを何より大切にする世代だ。旅行計画も仲間たちと相談する。そして旅先の宿泊施設を、仲間たちとの出会いの場にするだろう。 宿泊客のパーソナルなライフスタイルに適合している流行のブティックホテルのように、特定のソーシャルコミュニティーに対応するソーシャルホテルが誕生するかもしれない。彼らはシェアリングエコノミー利用者の中心でもある。今までの単なる名所旧跡の物見遊山旅行から、体験を重視する旅行がこれからの主流になる。ソーシャルトラベルの幕開けだ。ソーシャルトラベルの時代TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 81次の半世紀へPart 3 ● 展望|特|集|