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概要

TJ20140616_BN

 国連世界観光機関(UNWTO)によれば、世界のアウトバウンド旅客数は12年現在12億人である。ここではアウトバウンドを、自国から他国へ就労目的以外で出国する人(ツーリスト)の出発回数と定義している。一方、国際民間航空機関(ICAO)は、世界の定期国際線旅客数を12年11億5700万人と発表している。ここでの旅客数は出発・到着でダブルカウントするのでUNWTOと平仄(ひょうそく)を合わせるために国際旅客の出発回数だけを考えれば、その半数の約6億人となる。すなわち、アウトバウンド総数12億人の50%が航空を利用し、残り50%の6億人が陸路もしくは海路によって出国していると推定される。 世界の人口は現在72億人。30年には84億人、50年には96億人になるといわれている。人口が増加すれば、それに比例してアウトバウンドも増加する。ツーリズムが、21世紀最大の成長産業のひとつになるといわれる所以だ。エアバスは、平均年率4.7%増で20年後の32年に国際航空旅客需要が2.4倍になると予測し、ボーイングは年率5.0%増を主張する。エアバスの長期予測に基づけば、32年の航空旅客数は29億人(発着のダブルカウント)に達する。成長著しいアジア太平洋地域の構成比は、欧州(42%)に次ぐ26%に拡大する。新興国の新中間所得層の力強い成長がアウトバウンドの需要を押し上げる。 一方で目的地の環境収容力は、20年後の激増するアウトバウンド旅客数(2.4倍、29億人)に対応できるだろうか。世界貿易機関(WTO)のGATTが世界貿易秩序を作ったように、UNWTOも世界の目的地の環境収容力の基準を作る必要がありそうだ。UNWTO は、目的地に同時に訪れることができる最大旅行者数を、その目的地の収容能力としている。目的地の物理的・経済的・社会文化的環境を阻害せず、その地の住民コミュニティーに悪影響を与えることなく、訪問する旅行者の満足も損ねないことを条件とした収容力を環境収容力としている。 航空機メーカーは、今後20年間で3万機のジェット旅客機(年産平均1500機)製造が必要だと算盤をはじく。航空機の増加に対応して、飛行場も多数整備されなければならない。世界で現在230の空港新設が計画され、既存空港では滑走路増設やターミナル拡張などの改修が進行中であり、新空港建設と合わせて4000億ドル超(約40兆円)がすでに投資されている。ハードインフラの整備と並行して、パイロットと航空整備士も大量に供給されなければならない。いわばソフトインフラの整備が必要だが、今後20年間に世界でそれぞれ50万人以上新たに必要になるとの試算がある。環境収容力とインフラ設備市場は力強く拡大旅行者も変化牛場春夫(フォーカスライト日本代表)グローバルの潮流TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 80