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概要

TJ20140616_BN

海外旅行2000万人時代の到来で成田空港ににぎわいが戻る日もそう遠くないかもしれないひらばやし・じゅん●アクセンチュア入社後、観光振興に向けた官庁・自治体の事業計画策定支援、旅行会社の経営戦略策定支援、海外向け広報戦略策定支援などをこれまでに担当する。Profi leへのニーズが高まる可能性がある。その結果、従来のビジネスモデルでは海外旅行者数は増えても旅行会社の利幅が縮まるというジレンマを抱える懸念があることは留意が必要だろう。 最後に論点としたいのが、今後増える見込みの日本人海外旅行者をいかに日本の旅行会社・航空会社の収益機会の創出につなげるかである。筆者は、現状のまま海外旅行者数が増えても、日本の旅行会社等の収益につながりにくいのではないかと懸念している。例えば、海外旅行の際、日本人が外資のオンライン旅行会社を通じて外国のホテルを手配すると、日本への旅行産業への経済効果が直接的には見込めない。訪日旅行プロモーションと異なり、海外旅行プロモーションは国や自治体に頼ることができず、日本の旅行会社・航空会社が主な費用負担者となるなかで、このような業界構造は持続的とはいえないであろう。 日本人海外旅行者は増えたほうがいいと考える人は多いのではないか。海外旅行者が増えることには日本へのメリットもある。訪日外国人が増えたことが日本人海外旅行者の増加につながるように、逆もまた同様で、日本人海外旅行者の増加は訪日外国人の増加にも寄与する。また、国際間の相互理解の醸成につながるといった効果も決して見逃せない。海外旅行の促進は間違いなく重要なテーマである。 それゆえに、日本の旅行会社・航空会社が海外旅行者の拡大を図り、増えた海外旅行者によって日本の旅行会社・航空会社が収益を上げ、また海外旅行者の拡大を図るという正のサイクルの確立が非常に重要である。現在は、海外旅行者の拡大を図っても収益につながらず、海外旅行者の拡大への投資を縮小し、さらに収益機会を失うという負のサイクルが旅行業界の一部にできてしまっているように見える。本来、日本の旅行会社が顧客に最も近いところにいるという点で、日本人の海外旅行は訪日旅行よりもはるかに収益を上げやすいビジネスであるはずだ。 日本人の海外旅行を収益機会とするためには、とにかく消費者の目線でサービスを設計することに注力すべきだ。特に前述の通り、消費者の動向には20年までに変化が起きるため、20年の消費者の姿を想定することが求められる。一例として、増加が見込まれる高齢者の海外旅行者は、価格競争に巻き込まれにくく、海外経験が豊富で「舌が肥えて」おり、旅行商品にホスピタリティを求める傾向が強いことから、日本の旅行会社にとって最もビジネスのしやすい顧客層であろう。高齢者目線でサービスを設計すれば、海外旅行者の増加を確実に収益機会にできる可能性が高い。 海外旅行の愛好家の1人として、筆者は日本人海外旅行者数の増加を願ってやまないし、引き続き増加するものと確信している。13年の1回の落ち込みで海外旅行者数の拡大に悲観的になることなく、引き続き今後の成長市場として期待できるという認識をもって、海外旅行に関連する各プレーヤーは海外旅行者数の拡大を見据えた成長戦略を描くべきである。正のサイクルを取り戻すTRAVEL JOURNAL 2014.6.16 75次の半世紀へPart 3 ● 展望|特|集|