ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

TJ20140616_BN

 近年、日本人の海外旅行者数は伸び悩んでいるといわれている。確かに、2000年に日本人出国者数(法務省入国管理局)が1781万人を記録して以降、SARS やイラク戦争、またリーマンショック等のネガティブ要因が発生したこともあり、11年までこの数字を超えることができずにいた。だが12年、日本人出国者数は1849万人という史上最高の数字を記録した。12年ぶりの記録更新に、海外旅行2000万人時代の到来に向けての期待が高まった。 ところが、訪日外国人旅行者数が1000万人を初めて突破した13年、海外旅行者数は減少した。法務省入国管理局「出入国管理統計」の13年の日本人出国者数の月報値を単純に合算した数字は1747万人と、前年比100万人程度の減少となる見込みである。海外旅行者数は訪日市場と相関しないのであろうか。今後、訪日市場が拡大するなかで、海外旅行者数は伸び悩んでしまうのだろうか。 海外旅行者数は今も昔も一般消費者にとって大きな支出であり、マクロ経済動向に依存する部分が大きいと考えられる。内閣府が発表する年度別名目GDP(国内総生産、円ベース)と海外旅行者数を比較してみると、00年代後半は海外旅行者数とGDP が似た推移を見せている。この間は訪日外国人旅行者数よりも相関性は強い。だが、10年以降、GDPが停滞し、訪日外国人旅行者にも波が生じるなかで、海外旅行者数だけが伸びを見せるようになっている。 10年以降の海外旅行者数の伸びについては、過去の訪日市場の拡大がもたらした、航空座席供給の増加や、人的交流の拡大等の環境変化の影響によるものだという仮説を提示したい。航空座席供給増により価格が低下して海外旅行者のすそ野が拡大したこと、また外国人との人的交流に伴う海外旅行の新たな動機が創出されたことといった、訪日市場の拡大に伴う変化が見られたことで、マクロ経済動向の影響をあまり受けずに海外旅行者数を増加させられる素地が日本においてもできてきたと考えている。 この時点で筆者は、海外旅行者数も今後年々順調に伸びるものと考えていた。航空座席のキャパシティの問題は想定されたが、需要が多くあるところには必ず官民の努力で供給が増やされるはずで、実際に主に首都圏の空港キャパシティ拡大やLCCの新規就航等、航空座席の供給増は確実な見込みであったことからも、順調な伸びを予想していた。 では、なぜ13年は海外旅行者数が減少したのだろうか。答えは明白で、中国・韓国への海外旅行20年までに大台は突破する海外旅行2000万人時代はやってくる平林 潤(アクセンチュア経営コンサルティング本部マネジャー)訪日市場との相関TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 72