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概要

TJ20140616_BN

TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 54 山田 旅は有形ではないから、商売にするということがわかりにくいよね。石田 もともと差別化を考えて始めたビジネスではありませんが、抽象的かつ感覚的なことなので、伝えにくいのは確かですね。山田 旅行は誰にでもできることだからね。「旅を仕事にする」意味合いは、そのときどきで変わってきた。僕自身の経験では、初めはパスポートやビザ、外貨の申請をする代筆屋。その次に代理業、媒介、取次と変遷した。旅行業という生業として認められたのが1970年の大阪万博あたり。それまでは必要と思われない産業だったんです。石田 旅行会社の役割も変わってきたと思います。今、旅行会社がかっこいいという人は減っていますよね。業界に属させてもらう身としては悔しい。旅行会社は安心安全を提供している、という認識も浸透していません。山田 業界の努力も足りないよね。石田 造成力だけを考えれば、消費者にも旅はできてしまう。ただ、旅は楽しい一方で危険もはらんでいます。当社も、催行は旅行会社を通していますが、万が一のときにサポートがあることをお客さんに説明しても理解してもらうのは難しい。山田 旅行会社もサービスを安売りしている。スーパーのバーゲン大売り出し的な広告(先着何名、数字の語呂合わせ)で旅行全体をチープな印象にしてしまう。お客さんの望みを勝手に誤解している。サービスが無料と思っている人にいくら安くしても意味がない。石田 低価格が進み、そこで競争しているから利益も低い。人件費を抱えているので、新しいモデルにも転換できない。そこは僕も同じような疑問を抱えていますが、本質的に旅での体験はお金で買えるものではないので、プライシングで勝負しても仕方がないという思いはあります。山田 今の旅行業界は、感動やロマンといった旅の本質をお客さんに知らせていない。石田さんの「行きたいところから始める旅の作り方」のほうが、お客さんの共感を得られるのは当たり前です。石田さんが、「旅行」ではなく「旅」を仕事にするという表現をしていることが、僕はすごくうれしいし、期待している。「旅行」は移動、「旅行」と「旅」は違う、というのは僕の持論だから。石田 僕が「旅」にこだわっているのは、行動だけじゃなく、出会いも旅だと思っているからです。トリッピースでは、旅に行く前から、一緒に行く人たちが出会い、うちとけて、旅をして帰ってくる。それをまるごと旅の「体験」として捉え、プロデュースするのが僕たちの仕事と考えています。帰ってきた人から「ありがとう」と言われるのが何より幸せで、仕事をしているのだと思います。山田 IT の担い手である石田さんが「旅」を全面に出してきたのは不思議だし面白いね。石田さんの前で言うのもなんだけど、旅行の部分、つまり移動はネットに任せればいい。旅をクリエイトするのが旅行会社なんです。なぜ旅行会社はインターネットを敵視し、IT の世界を敵に回すのか。インターネットは、旅行業界に「本来の旅のクリエーターになれ」と教えてくれているのだから、ありがたいと思わないといけない。旅行会社が目を覚ます大切な時期に、石田さんが目を覚ますようなことをやっ僕が旅にこだわる理由旅での体験はお金で買えるものではないので、プライシングで勝負しても仕方がない