ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

TJ20140616_BN

いたものが、ある程度柔軟性のある価格が設定できるようになった。こうなると、情報更新が容易なネット販売は格安航空券や格安ツアー販売に絶好のツール。96年4月、フレックスインターナショナルツアーズがネットで格安ツアー販売を開始、97年2月にジェットツアーがネットで格安航空券の販売を開始、同年5月にはJTB がサンクスと提携し格安航空券を販売すると発表するなど、各社続々とオンラインの世界に参入してくる。 だが、インターネットは双方向のツールである。消費者は自らも発信者となり、旅行についても情報を共有し始めた。より安い航空券情報、お得なマイレージ情報(スターアライアンスは97年、ワンワールドは99年に登場)、ホテルや旅先、旅行会社にまつわる口コミ……。96年には後に楽天が買収することになる「ホテルの窓口」も登場。サプライヤーのお勧めでなく、利用者同士の口コミが予約を促す流れがここに生まれた。 98年6月、フランスで開催されたサッカー・ワールドカップでチケットが不足する事態が発生したときも、消費者はネットで情報を交換し合い、自己防衛した。旅の販売方法を変えたインターネットは、同時に旅する人々の意識も変えた。 またこの時期、航空会社のコンピューター予約システムも拡充し、IT による業務のスピード化が進んだ。不景気といいながら何とか「数」は保っていた旅行業界だったが、価格競争やシステム開発などのインフラ整備で実情はぎりぎり、という会社も静かに増えてきていた。 状況が目に見えてマイナスに転じたのは97年である。山一証券の破たんなど経済の不調がピークに達し、リストラも盛んに行われた。97年の渡航者数は前年比0.6%増の1680万人で、98年には前年割れの1580万人。この年を境に03年まで、1桁成長または渡航者数減が続いた。 98年2月、ジェットツアーが負債266億円を抱えて倒産。すると、せきを切ったように3月に地球の旅、6月にはとバス旅行、10月に四季の旅社……と、廃業や破産が相次ぐ。大手・中堅各社にも提携や組織改編の動きが見られ、99年3月には旅の専門旅行会社の連合会「旅専」が発足、12月にはJTBが事業ユニット制度を導入すると発表した。 99年7月、IATA が発券手数料9%の規定を撤廃すると決定した。間近に迫る2000年問題を懸念しつつ、厳しい状況のなか90年代は幕を下ろした。相次ぐ倒産、再編成の動き上/HISが新宿に1000㎡の巨大店舗をオープン。記念の格安ツアーに来店者が殺到した(1993年6月)写真提供/ HIS 右/日本人の海外旅行1000万人達成に伴い成田空港で行われた記念セレモニー(1990年11月)TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 35|特|集|次の半世紀へ