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概要

TJ20140616_BN

 一例が、81年に起きた「桂林オーバーブッキング問題」だ。旅行自由化間もない中国国際旅行社総社(CITS)側の体制が不十分なまま、人気が過熱した桂林に観光客が殺到し、10月だけで日本人3000人を含む1万人のオーバーブッキングが発生。ホテル確保や日程変更、催行中止などで各社が対応に追われた。また買春ツアー問題についてはマスコミでも取り上げられるなど社会問題化し、JATAは「旅行健全化特別委員会」を設置する。 82年4月23日、10年ぶりの大改正となった旅行業法が公布された(施行は83年)。旅行商品の主役が手配旅行から主催旅行に移り、ここまで述べたような既存の業法には収まらないトラブルが多発していたことを受けての改正である。 目指したのは旅行業者の責任の明確化と消費者保護で、①主催旅行の定義、②旅行業務の適正化が2つの柱。①主催旅行については、定義を明確にし、安全・確実な実施のための措置として、営業保証金の引き上げ、旅程管理業務、主任添乗員制度、広告の記載事項などの規定が定められた。②旅行業務については、標準旅行業約款制度、旅行会社・代理店の業務範囲、取扱主任者制度の改善などが図られた。さらに買春ツアーなどへの対策のため「不健全旅行への関与の禁止」も加わった。 業界の競争が激しさを増し法的な整備が進むなか、80年、1つの旅行会社が新宿のビルの一角で旗揚げした。格安航空券専門店「インターナショナルツアーズ」、後のエイチ・アイ・エス(HIS)である。 85年4月、規制緩和による競争に苦戦を強いられていたパンアメリカン航空が太平洋線をユナイテッド航空に売却すると発表した。同じ月、難航していた日米航空交渉が合意に達すると、その後、日本の空にはユナイテッド、アメリカン、デルタの米系航空会社が次々と飛来。逆に日本からは、86年に策定された新航空政策をもとに全日空や東亜国内航空(後の日本エアシステム)の国際線進出が実現する。さらに78年にITC(包括旅行チャーター)が解禁されたことで、地方空港から国際線チャーター便が運航され始める。 空路が充実しツアーの価格が安くなっていくなか、海外渡航者数は再び勢いを取り戻し始め、84年には前年比10%の伸び率を見せる。それと同時に、ユナイテッド航空がアポロ・システムの本格運用を始めた86年以降は、日本の航空・旅行業界も急速にコンピューター化が進んでいく。日本航空は86進むコンピューター導入旅行業界の利益確保が最大課題玉村文夫(旅行業者協会世界連盟(UFTAA)新会長/富士海外旅行社長)●トラベルジャーナルの誌面から 「事務所の資本投下、装備率の問題が出てくるわけです。旅行会社がコンピューターを入れるとなると、それなりに金がかかることですし、従業員もトレーニングしなければならない。コンピューター化されたエージェントとエアラインの関係がある一方で、電話一本でやっていて、すべて労働、事務手続きは航空会社にまかせている。これでは同じコミッションは払えない。今後はフラットな手数料の支払いではなく、階梯を設けて装備率によって手数料を決めていくことも考えていかなければならないでしょうね」 「コンピューター利用の促進を図りながら手数料をどうやって確保していくか。これが問題なんです。航空会社の利益を考えていかなければなりませんし、旅行業者の利益と両立するところがどこにあるのか考えていかなければいけない。われわれはこれまで、一律に手数料の増額というのをひとつの大きな旗印としてやってきた。それで7%、8%、9%とそれなりに、航空会社もつきあってくれたのですが、ここにきてずいぶん情勢が変わってきた。おそらく今後は手数料の一律増額は困難になってくるでしょうね」 「(日本の課題は)収益力の強化でしょうね。旅行業というのは、ちゃんとした世間に認められた正業でありますし、正業である以上は一人前に利益を収めるということは許されると思うんですが、どういうわけか日本の旅行業者の方は遠慮されましてね、収益に関する関心が高くない。しかし、それでは業界が強化されませんし、第一いい人材が集まってこない。業界の繁栄が、抱える人材によるとすれば、より高い収益力を目指さないと、今後の業界の見通しは暗いですよね」(1986年11月24日号)TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 31|特|集|次の半世紀へ