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概要

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いしだ・いあん●1989年東京都生まれの24歳。2011年3月にトリッピースを創業した。出版社勤務の父が国際的に通じる名前をと英冒険小説家イアン・フレミングから命名。「言葉」と「行動」という意味を添えた。(トリッピースCEO)文・石田言行TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 117 渡航自由化50周年特別編集号ということで、5月まで旅行産業経営塾の塾長を務められた山田學さんと対談させていただいた。正直、最初は話が合うのか不安な点もあった。山田さんは1934年生まれで、僕は1989年生まれ。山田さんは、海外旅行が自由化される前から旅行業界に携わってきた。今とは全く環境が異なるなかで、対談になりうるのだろうかと考えていた。 そんな不安も杞憂にすぎなかった。山田さんも私も旅を愛し、旅行業界に携われることを誇りに思っていたのだ。旅の本質とは何かを考え続け、貫き続けてきた山田さんとの話は本当に面白かった。詳しくは対談をご覧いただきたい。その対談の補完として、この原稿を書いている。また、山田さんを描いた本『旅は人に生きる喜びを与えるものです』をご覧いただくと、よりわかりやすくなるだろう。 山田さんの話の中で一番共感したのは、“Travel gives Life(旅は人に生きる喜びを与えるものです)”という言葉だった。当時は、旅行業界というものがなく、旅行業という仕事のアイデンティティがなかったという。しまいには、「お前らなんて高級ポン引きと一緒や」と貶される始末。その中で見つけた“Travel gives Life”という言葉には、今の時代でも通ずる旅の本質が詰まっていると思う。 遡ること50年前の1964年、海外に行けること自体が喜びであったであろう。そして、今はお金があれば旅に行けるという価値観になってしまった。広告宣伝においても、価格や日程が先行されて伝えられてきたのである。それによって、旅の本質である「生きる喜び」や「感動」の追求ということが置き去りにされてしまった。今こそ原点に立ち返り、旅行業界、旅行、そして旅とは何かを追求していく必要がある、という結論に達した。 山田さんからは「1964年の東京オリンピックでは、僕がチャータービジネスに挑んだ。次の2020年では石田さんが主役。任せたよ」とバトンを渡された。おこがましいことかもしれないが、使命を感じ、身が引き締まる思いだった。同時に、果たすべき使命だと心から感じたのである。 トリッピースでは価格も日程も検索不可能だ。旅の本質は“Travel givesLife”であり、日程や値段ではないと考えているからこその施策である。インターネットは検索可能にできる領域に利便性を与えた。情報化できる領域は、インターネットの独壇場になっていくだろう。では、リアルの世界はすべて可視化できるのか。答えはノーだ。人の人生はインターネットで作れないし、できてもシミュレーションだけである。今も昔も人の体験は主観的なものである。体験や感情すべての情報化は不可能である。 旅が与える感動は何か、どうやったら感動をより豊かにしてバリエーションを増やせるだろうか。それこそが今考えるべき課題なのだろう。トリッピースもそのひとつの解決策として、全力でこの業界を盛り上げていきたい。山田学さんとの対談(次回は7月14日号に掲載します)