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概要

TJ20140616_BN

ADVICEFROMPR0FESSIONALSH E A L T H篠塚 規先生の旅先の健康相談vol.A正しい対処法Q病例しのづか・ただし●千駄ヶ谷インターナショナルクリニック院長、日本旅行医学会専務理事。千葉大学医学部卒業、米ピッツバーグ大学医学部とジョンズ・ホプキンズ大学医学部留学。旅行医学の研究、論文多数。TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 114 定期購読係 TEL:03-6685-0010 FAX:03-6685-0031初回3,200円、次回以降2,360円×11カ月TJ14.04.07553世界的根絶間近と期待されていたポリオですが、13年になって、一部の地域で感染者数が増加しています。テロや内戦が続いている国では予防接種率がなかなか上昇せず、そうした国からの輸出例が増えているのです。現在、ポリオの流行が続いているのは、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3カ国ですが、周辺の赤道ギニア、エチオピア、イラク、イスラエル、ソマリア、カメルーン、シリアにも拡大し、現在10カ国でポリオの発生が報告されています。 欧州などではこうした国々からの輸出感染への警戒を強めていましたが、14年に入っても流行シーズンを前にさらなる感染拡大が見られたことなどから、WHO は5月5日、「国際的な公衆衛生上の脅威」と宣言。国際的な感染拡大を防ぐため、感染国の住民だけでなく、長期滞在者にも予防接種を徹底するよう呼び掛ける事態となりました。 日本では約30年前から野生株(自然に存在する株)による患者は出ていません。予防接種率も高く、万が一輸入感染が見られたとしてもすぐに流行につながる恐れはありません。ただし、世界との往来が一般化している現代では、予防接種をしなければ感染のリスクは常にあります。 ポリオは、ポリオウイルスが引き起こす感染症です。多くは乳幼児がかかりますが、成人が感染することもあります。感染しても90 ~ 95%は症状が現れず、発症してもかぜのような症状だけで知らない間に免疫ができますが、1000 ~2000人に1人、主に手や足に麻痺が現れ、一生の後遺症として運動障害が残ることがあります。特効薬はありません。 日本の定期予防接種では、12年8月まで経口生ワクチンが使われていましたが、生ワクチンは予防効果が高い一方、まれにワクチンウイルスによる麻痺を引き起こす事例が見られたため、同年9月以降は、欧米同様、ポリオ発病のリスクのない不活化ポリオワクチンの注射投与に切り替えられました。 WHO では、感染の報告されている国に渡航する場合、以前に予防接種を受けていても、渡航前に追加接種を受けることを推奨しています。さらに厚生労働省では、特に1975 ~ 77年生まれの人はポリオに対する免疫が低いとし、渡航先が流行国でなくても、追加接種の検討をするよう促しています。 レジャー旅行では警戒する必要はありませんが、発展途上国への支援活動などで現地に深く関わる人は注意が必要です。WHO(世界保健機関)が、ポリオの世界的感染拡大に対して緊急事態宣言を出したとの報道がありました。海外旅行も含め、どの程度の注意が必要なのでしょうか。ポリオの感染が拡大?(文・佐藤淳子)