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概要

TJ20140616_BN

TRAVEL JOURNAL 2014.6.16 113? !ADVICEFROMPR0FESSIONALST R O U B L E畑敬弁護士の処方箋はた・けい●立教大学法学部卒。84年4月東京弁護士会登録。取り扱い分野は、観光関係法規(旅行業・ホテル旅館業等)、企業法務全般(会社法、独禁法等)、学校関連。立教大学観光学部兼任講師(観光営業法)も務める。※本コラムはあくまでもトラブル解決の参考事例の1つとして掲載しています。負けした所長が旅行券を渡して納得してもらった。 野村さんの場合、いつもエコノミークラスのホテルを利用され、現地で苦情を言っては、なんらかの恩恵を受けている。その一連の行動が趣味なのではないかと思えるほどであるが、本人としてはVIP 扱いされるべきと思い込んでいる節もある。 当社としても、「対応について十分に気を付けるように」との指示を現地に出すため、野村さんに気を遣いすぎている面もあって、余計に腹立たしく思える。 先日の旅行では、「現地ガイドが生理的に気に入らない」などという理由でガイドを車から締め出し、ガイドなしでツアーを進めざるを得ない状況になってしまった。 この行動は、旅行業約款の「団体行動の円滑な実施を妨げる恐れがあると認められた時」にあたるとみなし、今後の旅行予約は一切受けないことを伝えたが、本人からはこの通知を取り消すよう求められている。 苦情の多いリピーターをあえて2種類に分けるとすれば、良いリピーターと悪いリピーターになる。良いリピーターとは、苦情は言うもののそれはその旅行業者に愛着を持っているからであり、旅行業者にとってもサービス向上の参考になっている場合である。悪いリピーターとは、苦情を言うことにより不当な利益を得たり旅行業者を困らせることを楽しみとしている場合である。野村さんは明らかに悪いリピーターであるから、A 社は1日も早く縁を切る必要がある。 約款7条は契約締結の拒否事由として「団体行動の円滑な実施を妨げるおそれがあるとき」を挙げており、野村さんがガイドを締め出したのはまさにこれに該当する。したがって、この条項を理由に予約を受けないと通知することも十分納得できる。しかし「円滑な実施」について野村さんと議論になる危険性があることは否定できないので、7条1項3号の「業務上の都合」を使うことも考えられる。これを使えば野村さんから「どういう業務上の都合だ」と聞かれても、「業務上の都合としかお答えできません」と繰り返していれば済むからである。そもそも契約の締結を拒否することは、契約自由の原則から理由は要らないのである。 なお今年4月の約款改正により、7条1項6号に「旅行者が不当な要求行為を行ったとき」が加えられた。暴排条項の一環としての改正であるが、本件のような場合も含まれる。 ネガティブキャンペーンを行うというのは強要罪に該当するので、「行動は止められないが…」ではなく「お止めください…」という回答がよい。 (畑敬) 野村さんは過去数年にわたって、当社の国内外のツアーに参加されてきた。しかし、海外のツアーにおいては、出かけるたびに現地で何かとクレームを申し立てて、現地ホテルに食事を出させたり、部屋をアップグレードさせたりしている。 また、帰国後も当社営業所のスタッフを自宅に呼びつけ、数時間にわたって罵声を浴びせるなどといった具合だ。当社のスタッフが根負けしてしまい、お詫び金を支払ったり、旅行券を渡したりするなどの対応をこれまではとってきた。 例えば一昨年の旅行では、ホテルのカードキーに不具合があると苦情を言い、ホテルから食事の提供を受けたうえ、次回宿泊時にはアップグレードするとの約束を取り付けた。そして昨年同じホテルを訪ねた際には、サービスに苦情を申し立て、宿泊費の返金を要求。ホテル側がこれを断ると、帰国後、当社の営業所長に現地での状況を撮影したビデオを自宅に見に来るように要求した。その結果、5時間も拘束され、根旅行会社の困惑リピーターが苦情連発どう対応すべき?あんなクレーム、こんなクレーム畑敬弁護士がアドバイストラブル処方箋文・吉田千春こうして解決トラブル事例▼▼「今後一切の旅行予約を拒否する」と通知された野村さんは、「2度とA 社は使わないが、通知は取り消せ。さもなくばネットや動画サイトでネガティブキャンペーンを行う」と脅迫。A 社はこれを拒否し、「お客様の行動は止められないが、内容によっては然るべき対処をさせてもらう」と連絡した。旅行会社A 社の常連客である野村さん(仮名)は、A 社の国内外のツアーに年何回も参加しています。しかし海外ツアーに出かけるたびに、あらゆる苦情を申し立て、ホテルに食事を出させたり、客室をアップグレードさせたり、A 社に返金を求めるなどの行動を繰り返してきました。リピーターであるだけにA 社は対応に困っています。vol. 589