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概要

TJ180402

TRAVEL JOURNAL 2018.4.2 33消費者の不満 あんなクレーム、こんなクレーム 旅行会社の言い分畑敬弁護士がアドバイストラブル処方箋文・吉田千春ADVICEFROMPR0FESSIONALST R O U B L E畑敬弁護士の処方箋はた・けい●立教大学法学部卒。84年4月東京弁護士会登録。取り扱い分野は、観光関係法規(旅行業・ホテル旅館業等)、企業法務全般(会社法、独禁法等)、学校関連。立教大学観光学部兼任講師(観光営業法)も務める。※本コラムはあくまでもトラブル解決の参考事例の1つとして掲載しています。こうして解決トラブル事例▼▼ 夫婦で海外に行くことになり、A 社のツアーを申し込んだ。だが不明点が多かったので、A 社にメールで問い合わせることにした。最初のメールで、旅行に関する不明点を列挙すること、質問が多いので書面で回答がほしいことを知らせた。まずは保険契約に関することだ。例えば「旅行傷害保険を複数かければ、何かあった時に保険金は重複して払われるのか」「こちらが依頼していないのに、保険代金と旅行代金がクレジットカードで一括請求されるのはなぜか。その正当性を説明せよ」「旅行業約款はあるのに、保険約款の記載が配布書面にないのはなぜか」といったことだ。また、現地については、B 市からC 市まで、そして観光地D からホテルまでの、それぞれの距離と所要時間、観光地Dの緯度、経度、さらに行程中にWi-Fi が使える場所とそれらすべての使用条件(制限時間や料金の有無など)なども質問した。 いずれも私たちにとっては重要なことで、安全で楽しく旅行するために知っておきたいことだ。だがA 社は徐々に回答をしぶるようになった。非常に失礼な対応で許せない。 西村夫妻の質問の数は度を超えており、2カ月間で質問は60を超えた。最初は可能な限り応えていたが、1日に5通のメールが送られてくるなど業務に支障を来すようになった。一度回答するとさらにつっこんだ質問が来るし、内容が重複する質問も散見され、嫌がらせとしか思えない内容もあった。しかし夫妻は高圧的に「回答せよ」「理由を述べよ」と迫ってくる。そのうち「今後は、われわれとの連絡は、国土交通省に教えてもらった責任者のE さんかFさんに限定しろ」と言ってきた。彼らは当社のリピーターでもないのに、自分たちに特別な配慮を求めるなど明らかに非常識だった。最初に「大量の質問にはお答えできません」と伝えるべきだったと反省している。 その後は電話もかかり始め、バスや飛行機の座席に至るまで、詳細な質問とクレームを長時間繰り返すようになった。たまりかねて出発40日前に、今後一切の質問に対応しないことを記した書面を支店長名で送付したが、すぐさま夫妻から「今後も質問を続ける」という旨と大量の質問が羅列されたメールが届き、途方に暮れている。 本件は、「旅行者が、契約内容に関し合理的な範囲を超える負担を求めたとき」(約款17条1項4号)に該当する典型的な事例だ。A 社が契約解除に踏み切ったのはやむを得ず、西村さんから取消料を徴収することはできない。 「合理的な範囲を超える負担」とは何なのか、言葉の意味は曖昧なので旅行業者の主観的な判断次第で一方的に解除することのないよう注意したい。とはいえ、どのような負担を要求されるかはケースバイケースなので一律に基準を示すのは難しい。サービス業として一般的に応対すべき範疇を超えているかどうか、各自の常識に照らして判断するほかないだろう。海外旅行に不慣れな人にとっては些細なことにも大きな不安を感じるだろうから、ある程度の質問に対応することは合理的な範囲に含まれる。 西村さんの場合、2カ月で60を超す質問、1日5通のメールが送られるというA 社の負担に関する客観的状況が明確になっており、質問内容も現地の観光地の距離や所要時間、緯度・経度など、ツアー参加に必須といえない情報を求めるものばかり。保険契約に関する質問に至っては旅行との関連性も希薄である。したがって合理的な範囲を超える負担と認めるに十分だ。特別なサービスを要求するのであれば、そもそも募集型企画旅行になじまない。 本条項に基づいて契約を解除する場合には、同号の該当性を争われるおそれがあることも考慮し、合理的な範囲を超える負担が生じていることを予め旅行者に知らせた上で解除する手順を踏むべきだ。したがって、本件でA 社が行ったのと同様に、旅行者に対して予め警告を発し、それでも態度を改めない場合に解除するとよい。 (畑敬)旅行を楽しむため詳細な情報が必要だ嫌がらせでしかない業務妨害と判断した書面送付後の夫妻からの質問に、A 社は回答せず。すると1週間後、さらに催促のメールが入った。A 社は約款の「旅行者が契約内容に関し合理的な範囲を超える負担を求めたとき」に当たると判断。夫妻宛に取消料なしで現在の予約を取り消すこと、今後一切の旅行参加を認めないことを書面で伝えた。A 社で海外ツアーを申し込んだ西村夫妻(仮名)は、A 社に何度もメールを送り、ツアーの詳細や保険契約、旅行契約についての質問を繰り返しています。最初はA 社もすべての質問に回答していましたが、さらに細かな質問が続き、メールだけでなく電話でも長時間の対応を強いられるように。A 社は夫妻の対応に困っています。vol. 772