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概要

TJ180402

ADVICEFROMPR0FESSIONALST H E C O M P L I A N C E質問回答みうら・まさお●1975年に司法試験合格。83年の標準旅行業約款のJATA原案の作成や、JATAの苦情対応セミナーなどでおなじみ。旅行業界を代表する弁護士のひとり。三浦雅生弁護士が答えるよろず相談TRAVEL JOURNAL 2018.4.2 32  今時、こんな質問を平然としてこられる、アッキーのような旅行会社の存在に驚きである。「手順」という問題以前に旅行会社の存在価値が問われている時代ではないのか。 インターネットの普及に伴い、①旅行者が独自にネットを使って宿泊予約するケースが増加、②宿泊施設自身もネット上で販売できる(自身のHP +るるぶ、じゃらん等のいわゆる場貸しサイトの利用)という状況から、旅行会社に手数料を支払ってまで販売を頼らなくてもよい状況になっている。海外の場合は空港からの宿泊施設への移動等の慣れない旅行となることからツアーのメリットはまだ残されるが、国内旅行は宿泊施設も交通機関もすべて旅行者自身で手配して支障はない。したがって、そもそも旅行会社が宿泊施設に販売手数料引き上げを要求できるようなマーケット状況にあるのか疑問だ。 唯一、値上げ要請が功を奏しそうなのは、一定の送客実績のある大手旅行会社だろう。送客実績を背景に送客手数料の値上げを迫られれば、宿泊施設としても抵抗するのは難しい。しかし、送客実績という優越的地位を利用して実質上取引対価を一方的に決定すれば、独禁法の禁止する優越的地位の濫用に当たる場合がある。そこで、その値上げ幅が妥当なのか、値上げに当たって宿泊施設と十分な協議が行われたか、他の取引先との条件に比較し差別的でないか等に十分な注意が必要となる。 したがって、それでも販売手数料を引き上げたい場合には、値上げ分に値するメリットを宿泊施設に与える他ない。それには旅行会社の本来的な役割・強みである企画性に立ち返るしかないだろう。旅行会社の商品の中で、たとえば宿泊単品のツアーや宿と交通機関を組み合わせただけのツアーが多数あり、これが売れていたのは1つのパンフットに多数の宿が掲載され、旅行者がその情報をもとに宿を選ぶことができたからだ(いわゆる情報集約ビジネスでリクルートがその走り)。 しかし、今やネット上で簡単に宿の検索ができ、しかも最安値まで探せる(トリップアドバイザー等)ようになっているので、昔重宝した情報集約ビジネスは今ではネット上にありふれたものに過ぎない。従来の単なる情報集約型ツアーで手数料を引き上げるのは困難ということだ。 そうすると、①空室率の高いオフ期に集客できる企画(シニア向けセミナー企画等)、②閑散としていた宿泊施設に集客をもたらす企画(立地の不便さを「秘境」や「探検」、古さを「歴史」と言い換える等)、③宿泊+イベントという付加価値で集客増を図る企画(宿の歴史にちなんだクイズイベント等)、④パンフレット等で宿泊施設にスポットを当て隠れた魅力をアピールする企画(「美人女将のいる宿」等)、⑤宿泊施設の新たな需要層・ターゲットを掘り起こす企画(年寄り客中心の宿に若い女性向けインスタ映え企画等)、⑥ツアーの新たなテーマを策定し宿泊施設に集客をもらす企画(「美肌の旅」をテーマに温泉や食事、エステ等を組み合わせる等)等で、宿泊施設にメリットを与え、その見返りに手数料増を得るというWin-Win の関係を探ることに尽きる。 こうしたことは、いわば言い古されてきたことでもある。インターネットの普及で産業そのものが廃れると未来予測されている旅行業にあって、地方の父ちゃん母ちゃん旅行会社の特定旅行者密着型ビジネスをより深化した道を行くか、宿泊施設・交通手段等の手配から脱皮してより広いビジネス分野を開拓する方向に向かうか、岐路に立っているように思われる。 前者は稲盛さんの提唱されるアメーバー型組織に向いていることから、意外と後者の方向性より確実でないかと思っている。vol. 542販売手数料を引き上げたいどのような手順がスムーズか宿泊施設の販売を行ってきたが、販売手数料を引き上げたいと考えている。宿泊施設側の反発は必至に思えるが、どのような手順を踏めばスムーズにいくのか。また、引き上げを拒否された場合の対応はどうすべきか。旅行マーケットの現状Win-Winの関係を築けるか(次回は4月16日号に掲載します)