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概要

TJ180402

合宿施設にコンバージョンしました。このように、公有財産を活用した、イノベーティブなコミュニティビジネスを展開している例もあります。 佐賀県はスポーツコミッション活動が盛んで、野球や陸上などで国内外から合宿誘致を行っています。毎年11月初旬に開催される熱気球競技のインターナショナルバルーンフェスタには約10万人以上が観戦に訪れます。地元のバイク店が愛好家100 ?200人程度を集めてやっていたモトクロス大会にスポーツコミッションが関わることで、1000人単位に成長したという事例もあります。23年の佐賀国体を機に大規模アリーナの建設計画も進んでおり、今後の発展が期待されます。 地域スポーツコミッションは、多様な役割を担いますが、最終的にはDMO(観光地経営組織)と同じく、稼げる組織になる必要があるでしょう。これからも地域内外から人を呼び込むためのイベント開催・招致を積極的に行い、稼ぐ仕組みを構築していかなければなりません。 旅行業界においても、多様なブルーオーシャンに挑んでいく必要があります。その1つがパークマネジメントです。大阪城公園では、大阪市が民間事業者でつくる共同事業体と20年間の指定者管理契約を結びました。年間2億4000万円の賃貸料は市に入り、市の補助金がない代わりに、利益は事業体が使えるという仕組みです。施設にランニングステーションが開業し、大阪城周辺の企業にランニング同好会が誕生したり、堀をスイムで利用し、場内をランとバイクで使う大阪城トライアスロン大会が開催されるなど、公園全体をスポーツに活用しようというイノベーティブな動きも生まれています。 顧客から依頼を受けて旅行商品をつくる伝統的な代理店ビジネスは、競合の数が半端なく多く、レッドオーシャン化しています。そこから抜け出すためには、地域やあらゆる産業も巻き込んだ価値の創造が求められています。さまざまなアプローチがありますが、常にブルーオーシャンを探し、新しい挑戦を続けていく必要があります。 いくつか例を挙げますと、北海道で行われている「おもてなしスノーレンジャー」と銘打った留学生スキーインストラクター育成プロジェクトがあります。中国の留学生にスキーを教え、彼らが地元に残り、中国人にスキーを教えるといった好循環を狙っています。さらにスキーの操作技術を単に教えるようなインストラクターに加え、食事のおすすめスポットや行動を共にするスキーガイドに対する需要も今後高まる可能性があります。 自転車やスケートボートなど、アーバンスポーツの世界的な祭典「FICE(フィセ)」には10代の若者が世界中から集まりますが、広島県で4月に開かれる世界大会には約10万人の観客が訪れることが予想されます。アーバンスポーツはスポーツツーリズムのなかでも今後、ブルーオーシャンとして伸びる可能性があります。 何もない野原にラグジュラリーなキャンプを持ち込むグランピングも、期待が持てます。400人が同時に泊まれる少年自然の家は、少子化で過去の遺物のような存在になりましたが、グランピングができるように設備を刷新すると、そこに新しい価値が生まれました。 ほかに期待を持てるのが、ウインタースポーツです。22年の北京冬季オリンピックに向け、中国は国を挙げて冬季スポーツ産業を発展させようとしており、日本の良質な天然雪を求めて訪れる中国人はますます増えるでしょう。日本は世界でもまれなパウダースノーが降りますし、都市とスキー場に近いといった交通利便性にも恵まれています。中国市場の富裕層を、いかに取り込んでいけるかが鍵となりそうです。 旅行業界のブルーオーシャンへの本格的な挑戦は、異業種の出現や新たなアイデンティティーを持った産業の創出につながる可能性を秘めています。旅行業界には、それくらいの変革を歓迎する決意が必要かもしれません。スポーツツーリズムには大規模イベントをレバレッジとした、さらなる成長機会が目前に迫っています。ぜひこの新しい分野に挑戦していただきたいと思っております。旅行業のブルーオーシャン戦略28 TRAVEL JOURNAL 2018.4.2