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概要

TJ180402

レンタカー利用者の外国人率は9割。幼少期から観光教育が施されている沖縄では受容度が高いたかはし・あつし●1989年、東日本旅客鉄道(JR東日本)入社。本社営業部旅行業課長、千葉支社営業部長等を歴任後、2009年びゅうトラベルサービス社長、13年JR東日本営業部次長、15年同担当部長を経て、17年6月から現職。Profileできる。外国人労働にも前向きだ。 サトウキビの島にすぎなかったハワイが、日本からの太平洋路線の途中降機地であったこと、日本からの移民が多くいたことなどを背景に観光地へと変貌を遂げたように、沖縄の地理的、歴史的背景が持つアドバンテージは計り知れない。一方、同じく本州から遠く一定のブランドを有する「島」なのに、北海道がハワイや沖縄のようにならない理由は、ランドオペレーター的な機能を有する旅行会社が現れなかったことと、1次産業比率が高く地域を挙げて観光産業とその担い手を育成するという機運が生まれなかったことが大きい。 3月中旬、国際通りを歩いてみた。大きな変化はやはりインバウンド客の増加で、店はどこも大賑わいだ。空港近くのレンタカーステーションで聞くと「外国人比率は9割」とのこと。中部の世界遺産のグスクは流行のブライダルフォトのスポットと化していた。ただし、レンタカーの送迎バスはステーションまで約1時間を要した。ハワイほどシステム化されておらず、急増する観光客に対処できているわけではない。国際通りでは激しい客引きを期待していたのだが、そうでもなく、観光客の急増にみんな疲れてしまっているような感じすらしてしまう。まだまだゴールは先だ。 ハワイ同様、陸路での入域ができない沖縄の観光客のキャパシティーは、クルーズ船を除けば総航空座席数内に制限される。20年に供用開始予定の那覇空港の第2滑走路ができても発着自体は1.2倍程度にしか増えないという。絶対値として観光客の増加の天井は見えている。だとすると当然、質を高めることへと舵を切らなければならない。 しかし、これには相当なハードルがあるのも現実である。ホテルは年々増えているが、那覇市内中心部のビジネスホテルが多い。外資系ホテルがないわけではないが、スーパーラグジュアリークラスは少ない。ハワイでいえばマウイ島、ハワイ島に該当する石垣島、宮古島に至ってはさらにない。本島中北部に点在するリゾートホテルも、バリのウブド、ヌサ・ドゥア、サヌールのようにエリアごとの特色が定着しているわけではない。オアフ島はこの数年で中心部とその周辺のゾーニングが見事に使うお金で分類されつつある。雑多なアジアの街の雰囲気があるのも沖縄の魅力だから何もかもハワイを目指す必要はないが、プレミアムな人を惹きつける場所がスモールラグジュアリーの隠れ家的ホテルだけ、というのはもったいない。 MICE はさらにインフラが必要だ。国際会議のできるコンベンション施設はサミットが行われた万国津梁館とコンベンションホールのみで、大きさは福岡のマリンメッセの半分以下。インセンティブではハワイならサンセットクルーズを借り切って数百人規模のパーティーが同時にいくつもできるが、こうしたコンテンツも乏しい。宿泊には那覇市内が便利だが、会議場は遠く、公共交通機関はバス頼み。市内の渋滞は深刻だ。日本で最もアジアに近い地の利をもっと生かせるはずだが。 絶対値としての労働力はしばらく潤沢な沖縄県だが、平均年収は最下位。しかし、その額はこの数年急激に伸びている。これも観光の力だ。上質な観光で稼ぐ人をつくることに一番近道なのもまた沖縄県。他県にはできないステップアップができるはずだ。受け入れ施設不足が顕著TRAVEL JOURNAL 2018.4.2 19