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概要

TJ180402

 「沖縄がハワイを超えた」というニュースに正直驚いた。毎年1回程度は訪沖し、目に見えて観光客が増え、ゆいレールや国際通りの混雑が尋常ではなくなってきたのを感じていたが、超えたのはあのハワイである。しかも、日本各地に見るインバウンド客の急増だけでなく、国内観光客も増やしての結果だ。大変喜ばしいことだと思うと同時に、古くから観光地として先進的な取り組みを多数進めてきた沖縄の皆さんに敬意を表したい。 本誌でも何度か書いてきたが、日本の旅行業で最大の成功を収めたデスティネーションはハワイだ。空港で旅行会社のお客さまが専用出口を出ると、バゲージタグを目印に現地係員が迎える。荷物はその場で仕分けされ、ホテルの部屋まで別便で送り届けられる。人間は市内までバスで送ってくれ、追加代金で直接ホテルに向かうアレンジもしてくれる。 日本で渡された1枚のカードでホテルにチェックインでき、トロリーにも乗れて、免税店のID カードまで兼ねている。ホテルのディレクトリー、TV放送、レストランのメニューも日本語で用意され、チップ込みのミールクーポンもある。レンタカーも英語での会話は不要だ。フリーの地図は正確で常に情報がアップデートされ、世界中の観光客が街や海と融和して過ごしている。観光客を意識した無料イベントがあちこちで行われ、情報が行き渡っているのでいつも賑わっている。そして何よりも、「アリガトウ」「コンニチハ」はハワイ中の人が知っていて、何度となくその片言の日本語とともに満面の笑顔に触れることができる。 ハワイのこうした「観光(客)ファースト」の仕組みに最も近い日本の観光地が沖縄だ。空港周辺やおもろまちDFSのレンタカーステーション、フリーの地図やお土産のデリバリーサービス、オプショナルツアーの仕組みなど。日本では、着地を統括し、旅程をコントロールするランドオペレーターが不在のなかで、早くからJTB 沖縄や沖縄ツーリストがオペレーター的視点で動いてきたことが大きい。加えて、早くから教育旅行の不動のデスティネーションであったこと、観光戻し税なる実質的な免税制度を国内観光客にも導入したことなど、「観光で生きる」ことが昔から定義されていた。24時間の外国語ヘルプダイヤル、IC タグを使った決済や移動のシームレス化など、他県に先駆けたインバウンド向けサービスの導入も著しい。 沖縄では県と観光コンベンションビューロー(OCVB)が連携し、観光教育を実施している。小学4年生全員に配布される教材には、なぜ観光が重要かという経済的視点や観光資源、おもてなしなどについて書かれている。郷土芸能のエイサーはほとんどの小中学校で必修だ。人口増加率は2.9%、15歳未満人口は17.8%でいずれも全国第1位(国勢調査2015)。地元就職率も高く、人材不足が観光客増加に対する最大の課題になりつつある他の県とは景色が違う。あと5年程度は生産年齢人口も増加する見込みで、観光教育を受けた子供たちが自然と観光の仕事の最前線へと向かう流れも期待勝因はランオペと観光の担い手上質な観光に舵を切る高橋敦司ジェイアール東日本企画常務取締役営業本部長世界水準リゾートへの要件18 TRAVEL JOURNAL 2018.4.2