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概要

TJ180402

観光産業にとってMICEは保険の役割も果たす。社会状況の変動も受けにくいたけうち・のりこ●1986年大阪大学人間科学部卒業後、コンベンション企画運営会社を経て、90年コングレの設立に参画。2001年取締役営業企画部長、05年常務取締役、11年代表取締役専務。13年6月より現職。Profileテル客室数には限界がある。したがって、富裕層に訴求できる魅力向上を図り、消費額アップを狙う戦略を立てている。高い物価も逆手にとり、決して安売りはしていない。 ターゲットを定めたプロモーションも大切だ。ハワイへの来訪者は米国本土からが60%前後と主力。米国本土から遠く、まとまった休暇を取る習慣で滞在期間がおのずと長い富裕層に注力する。さらに、海外からの来訪者の中でも特に多い日本や中国、韓国などには国ごとに特化した誘客を行い、対象をむやみに広げない。 気候のリスクの低さもハワイのアドバンテージだ。常夏の島でありつつ、年間通して雨量が少なく、湿度は比較的低い。そのため、屋外でのユニークベニューイベントが計画しやすく、悪天候によるキャンセルも起こりにくい。 また、英語圏である優位性に加え、日本語への取り組みが手厚い点も、来訪者数が多い国への対策として参考にしたい。 沖縄が世界トップレベルのMICE リゾートを目指すうえで求められる4つのポイントを挙げる。 まず、主催者リスクをカバーし、参加者増、消費額のアップを狙うことだ。沖縄での会議開催は、沖縄自体の魅力が国内参加者へもアピールになることは確かだ。同時に、遠距離による旅費・宿泊費の増加、同一会議での過去開催事例の不足、移動時間の長さなどに起因する参加者減、出展者減による収入減のリスクが常にある。それには、助成・協力による負担軽減策、全天候型のアリーナ活用等による天候リスクの回避、交通渋滞を避けたプログラム提案といった各種対応策を講じる必要がある。 2つ目に戦略実現ツールとしてのMICEの活用だ。すでに取り組まれているが、IT、食品、輸送、観光など、特に伸ばしたい産業のMICE 誘致・開催支援は有効な手段の一つ。また、観光のオフシーズンにMICE を開催することにより、年間を通して人を呼び込める。ハワイでは11月の感謝祭と12月のクリスマスの間の閑散期にホノルルマラソンや数年ごとに開催される大型学会が組まれている。沖縄でも12月のNAHA マラソンや2月のおきなわマラソン、プロ野球春季キャンプがある。企画や誘致は工夫のしどころが大いにあり、来場者の満足度を高め、消費額を上げるさまざまな工夫ができる。 3つ目は人材の確保と育成。置き去りになりがちな項目の1つだが、島内の人材に加えて、本土のIターンや外国人材を確保する策はあるか。生産効率を上げるためにも、一定レベルのIT 投資が急務だろう。国際的なつながりへの関心を高めるため、若者の沖縄での国内外の交流活動も支援したい。 そして最後に都市間連携。同一都市での固定開催は難しくても、MICE リゾート間を巡回開催するMICE を創出してはどうか。たとえば参加国持ち回りの会議として、沖縄、海南島、済州島などで日中韓の会合は開催できないか。国内都市間連携で、沖縄と北海道での交互開催も1つ。定期的な特色あるMICE は保険につながる。 先月、沖縄県はMICE 主催者に訴求すべく「Where inspiration meets」のタグラインを添えた沖縄MICEのブランドロゴを発表した。沖縄の魅力を最大限に生かし、可能性をより広げるMICEリゾートとしてさらに都市力をアップしていってほしい。都市間連携で巡回開催をTRAVEL JOURNAL 2018.4.2 17