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概要

TJ180402

 沖縄への入域観光客数が世界のビーチリゾートの代名詞であるハワイを超えたことは、沖縄観光の魅力が高く評価されていることを示す絶好の機会となった。一方、観光客数で上回ったとはいえ、滞在日数や消費額ではハワイを大きく下回っており、世界的な認知度も及ばない。観光地としての実力は、観光客数、経済波及効果、観光客と住民の満足度、社会的効果などの多様な指標を基にした総合力で判断すべきである。ハワイは観光評価指標に観光客数は掲げていない。 ここでは、ハワイの観光政策から沖縄県が参考にしたい2つの重要な取り組みを紹介したい。1つは観光振興財源確保策である。ハワイでは1987年から宿泊税(TAT)が導入されており、観光振興財源のみならず州の一般財源としても貴重な存在になっている。世界中で宿泊税を導入している観光地は多いが、ハワイの税収は群を抜いている。これまでの税率を今年1月から1ポイント引き上げて10.25%とし、州消費税と併せて約15%の税率が宿泊費に加算されることになった。16年の宿泊税収は約533億円に上っており、東京都の約22億円をはるかに上回る。自主財源の乏しい沖縄県で宿泊税を活用した観光政策強化は急務である。 もう1つは政府が住民の観光振興に関する支持率を重視している点である。ハワイでは観光客数の増加に伴い、不動産や物価の上昇、交通渋滞の悪化、ホームレス増加などが社会問題となっている。10年に8割を記録していた観光支持率は14年には64%まで低下しており、政府は20年目標を8割に設定し、住民生活の改善や環境保全などに取り組むことにしている。ほかにも景観政策や文化保護育成政策など、沖縄観光が学ぶ点は多い。 人口規模や産業構造など類似点の多い島しょ地域として、沖縄とハワイの双方の持続的な発展の実現を目指し、観光のみならず幅広い分野での産学官金連携による新たな仕組みが必要である。 沖縄観光は1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会を契機にビーチリゾートへの道を歩んできた。開催後の急激な落ち込みの回復を図るため、航空会社や旅行会社が中心となって展開した沖縄キャンペーンを受けて、沖縄本島北部西海岸を中心に大型リゾートホテルや観光施設が次々に開業し、イメージアップに大きく貢献した。90年代以降は、沖縄の音楽、食、芸能、離島地域などへの関心も高まり、観光客数はさらに増加した。また、夏場中心の観光からの脱却を図るために取り組んできた修学旅行誘致、プロ野球をはじめとする各種スポーツキャンプ誘致やマラソンイベント開催、リゾートウエディング誘致、クルーズ誘致などの新たな市場開拓とアジアを中心とする海外市場開拓も功を奏してきた。観光客誘致に加え、00年に開催された沖縄サミット以降は国際会議開催地としての知名度が向上し、近年は学会や見本市開催などMICE規制のさじ加減「質」の強化で複合的要素備える下地芳郎琉球大学国際地域創造学部教授世界水準リゾートへの要件14 TRAVEL JOURNAL 2018.4.2