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概要

40_1964-2003

新たな経営能力を問われる時代澤田秀雄〃′ノ′θs′″′ノ′1951年生まれ。80年にHISの前身となるインターナショナルツアーズ設立。96年スカイマークエアラインズを立ち上げ、豪州にホテルも開業。99年にはエイチ・アイ・エス証券(現エイチ。エス証券)を設立。04年6月HIS取締役会長となり、HISグループの代表を務めている。44 観光立国への道テーマインタビュー◎渡航自由化40年とツーリズム産業の行方エイチ・アイ・エスグループ代表澤田秀雄氏70年代後半にヨーロッパ留学から帰国して痛感じたのは、日本の旅行会社がどこも横並びのサービスと品揃えである点だった。旅行商品の値段も中身も各社同じで常に一定。しかも全体として旅行費用は高く、海外旅行は一部富裕層のものだった。一方、欧米ではその頃すでに不便な時間帯のフライトの値引きなど、条件付きの割引などが当たり前のように行われていた。航空会社や旅行会社がアイデアと工夫で競争する土壌ができつつあったわけで、日本との違いを感じた。さらに日本の旅行会社は団体旅行中心で、個人旅行への対応はないに等しかった。日本の旅行業界の当時の状況は、私の目には逆にチャンスと映った。日本もいずれ欧米型の旅行市場になる。ならば個人旅行をターゲットにすれば成功すると確信できたのだ。そこで80年に旅行会社を設立し、既存の旅行会社があまり手がけていなかった個人旅行と格安航空券、それに面倒でややこしいため旅行会社が敬遠しがちだった手配旅行を、新会社の3本柱として旅行者にアピールした。ニッチ狙いである。この狙いが当たり、売り上げは毎年倍増の勢いで伸びた。一石を投じたスカイマーク国内航空運賃も横並びだった。その状況を変えるには、自ら国内線を運航するしかないと考えて設立したのがスカイマークエアラインズだ。航空会社の経営は、規制の厳しさや規制の多さを乗り越える工夫と、数年間は赤字覚悟で持ちこたえる資金力が必要で、非常に難しいものがある。われわれもたいへん苦労した。しかし、スカイマークエアラインズの経営も軌道に乗りつつある。苦労はしたが国内航空運賃自由化が進み、国内航空のあり方に一石を投じる社会的意義があったと思う。HISが急成長した時期は、海外旅行の第2期に当たる。第1期は海外旅行自由化とともに始まり、添乗員付きの比較的高額な海外旅行が主流を占めていた時期だ。それに続く第2期には個人旅行が普及し、海外旅行が手頃な費用で楽しめるレジャーとして定着するようになった。しかし、この第2期も終わろうとしている。私が旅行会社の経営の第一線を退いたのはそのためだ。これから始まるであろう海外旅行の第3期には、新しい経営の能力と判断力が求められる。ならば後進に託すしかない。新勢力への危機意識を海外旅行の第3期は、おそらくコンピューターによるネットワークが重要な役割を果たすだろう。現時点ではウェブ系の旅行会社は、必ずしも脅威ではない。商品づくりにおいて重要な仕入れ力と企画力に欠けるからだ。しかし、今後は力をつけてくるだろうし、M&Aによって仕入れ力や企画力を一気に強化することも考えられる。さらに脅威なのは、既存の旅行業からは生まれない斬新な発想が出てくることだ。実際に米国ではウェブ系の旅行会社が大変な勢いで成長し、わずか数年で数千億円規模の売り上げを誇る大旅行会社となっている。同じようなことは、HISが第2期に経験したこととも重なる。新たなアイデアを持ち込むだけで、市場の景色は一変する。既存の旅行業界は、第3期に台頭してくるであろう勢力に対して大いに危機感を募らすべきである。おそらくHISは、いま最も危機感を持っている旅行会社である。なぜなら、自分たちが第2期に成し遂げてきたことの何たるかを理解しているからだ。どんな旅行会社も、時代への対応を誤ったり、出遅れたりすれば、新たな成長勢力に駆逐されることになる。