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概要

40_1964-2003

官民のベクトル一致が不可欠鷲頭誠″″あ"%`ヵ%″1948年生まれ。72年東京大学経済学部卒業後、運輸省(現・国交省)入省。94年運輸政策局観光部企画課長、97年政策課長などを経て、00年から観光部長を約2年間務めた。02年政策統括官、03年海事局長、04年7月から現職。Visions for Tourism Industry国土交通省総合観光政策審議官鷲頭誠氏渡航自由化以降の40年間の大きなトピックスとしては、1986年にスタートさせた海外旅行倍増計画(テンミリオン計画)を挙げたい。諸外国の例をみるまでもなく、観光政策は外客を誘致することに向けられるのが一般的だが、われわれが目指したのは日本人の海外旅行マーケットを91年までに1000万人に拡大しようというもの。海外に出掛けてもらうことで、日本人の国際化を進めようとしたわけだ。貿易収支の黒字減らしへの期待も大きかった。諸外国に比べると極めてユニークな取り組みだったが、こうした政策は当時の日本の実情に合致していた。アウトバウンド・ビジネスは、航空会社や旅行会社など事業者の主要ターゲットだったため足並みが揃い、日本人には海外への憧れのようなものも強かった。自治体の取り組みも熱心で、海外旅行倍増計画をめぐる関係者がいずれも同じ方向に、揃って進むことができた。(渡航自由化された)64年以降、基本的に渡航者数は右肩上がりを続けたと思うが、やはり、このテンミリオン計画が市場を一気に押し上げたのではないかと考える。相互交流重視へ転換ただし、ここ数年でアウトバウンド市場は大きく変質した。日本人にとって海外旅行はかつてのような特別な楽しみではなくなり、パソコンや携帯電話といった新たな競合相手が登場した。関係者にとっては、これらを押しのけてまで海外へ出掛けてもらうためにはどうすればよいのかを考える時期に来ているだろう。海外旅行者が1000万人を突破した後、行政としては相互交流の拡大に主眼を置いた政策「ツーウェイツーリズム21」を打ち出した。海外から日本を訪れてもらうことの意義は誰もが認めるところで、そうした認識に基づいて従来強化してきたアウトバウンドと並行してインバウンドも拡大していこうと考えた。ただし、実際に政策を進めようとした頃は、事業者がビジネスのターゲットとしてやっていくにはまだ十分な環境が整っていなかったり、自治体も公共投資や民間の工場・設備などを誘致することばかりに目を向けていた時代。その成果に疑間を投げかける向きもあるが、時期尚早だったというわけではなく、あの頃の取り組みを経て、現在の観光立国に向けた機運の高まりがあると考えている。業界も積極的に関与を幸いここに来て、自治体の間で観光による外客誘致を重視する姿勢はかなり強まっており、航空会社、旅行会社なども徐々に自らのターゲットのひとつに加えつつある。テンミリオン計画の際のように、関係者のベクトルがようやく一致してきたといえるのではないか。ビジネスに取り込むには難しい面もあるようだが、マーケットが一定の規模に達すれば、いろいろな局面でプラスに作用し始める。また、インバウンド需要が膨らめば、アウトバウンドヘの相乗効果も見込めるはずだ。来年度予算の概算要求では、「観光ルネサンス事業」として民間の地域振興に対する取り組みヘの支援を盛り込んだ。ややもすれば、特定の民間組織を肩入れしているかのように取られかねない事業に予算付けするということは、一昔前では考えられなかった。それだけ時代が変わったということだ。たとえば旅行業界には、従来の送り出すだけのビジネススタイルではなく、受け手に対しても積極的にかかわってほしいと思う。観光ルネサンス事業は、業界に対して「一緒にやっていこうよ」という呼びかけでもある。観光立国への道 41ー「‐ぎ`やマ」J 解ノ島L,L