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概要

40_1964-2003

「■ D7~ マ新幹線開業と新路線就航L―生まれる人の流れ、創られる観光地■■●■ここ数年間を見ても、新たな新幹線の開業、新規航空会社の就航による増便など、国内の移動の利便性は急速に高まっている。もともとこうした路線開発の大義名分は、地方経済の発展に寄与するためともいわれるが、地方都市の交通ネットワーク拡充により、新たな人の動きが生まれている。首都圏から1泊国内に入った青森。十和田湖周辺の人気にも拍車がかかる(奥入瀬,実流)はやて開業で生まれた“北東北"「これまで東北は東北、“北東北"と題したパンフレットは存在しなかった」と、旅行業関係者たちは指摘する。ここ数年の間で、人の動きを最もダイナミックに変えたのは東北新幹線「はやて」の開業だろう。はやてが開業したのは02年12月。これから冬の真っ盛りという時期のスタートだったにもかかわらず、首都圏から“北東北"への旅行者は急増した。JTBによると、02年12月から03年3月までの東北への旅行者数は、月ごとの伸び方に差はあったものの、前年比で50~ 80%増に膨らんだ。東日本旅客鉄道(JR東日本)のパッケージ商品「びゅう」の東北方面の取扱人数は倍増。JR東日本は、はやての往復と古牧温泉を組み合わせた1泊2日を「はやて冬劇場」と名づけ、1万9800円で発売。12月から翌年3月までの販売人数は、当初日標の1万8000人を大幅に上回る3万人を達成した。はやての開業によって、もともと人気の高かった青森周辺の温泉や十和田湖まで、首都圏から1泊または2泊程度で行けるようになり、身近になっただけでなく、地元が旅行会社や鉄道会社と一緒になって、観光地の魅力増大に取り組むようになったことが、北東北へ旅行者を引き付ける要因となったようだ。“冬の東北"を売るために、JR東日本と地元自治体はまず、通常冬季は休業していた旅館や施設を開けてもらうように働きかけた。さらに、自治体が音頭をとって氷の張った十和田湖に遊覧船を運航させ、花火を打ち上げたり、かまくらを作ったりと、観光客をもてなす冬ならではのメニューを次々と提案し、実現していった。これまで通過点に過ぎなかった八戸でも、新幹線の開業を機にできるだけ八戸に滞在してほしいと地元の意識が変わってきた。JTBでは青森周辺の温泉に1泊するツアーに、八戸の「八食センター」を組み入れたが、参加者からの反応は上々だという。人食センターは、新鮮な海産物や土地の食べ物のほか、食事処もそろっているショッピングセンターで、:地九● ●●●の食生活に触れることができる。はやての開業で首都圏から列車で北海道を訪れる需要が急増した。八戸から函館までは、特急「白鳥」が運行しているが、従来は八戸にたどり着くまでに時間がかかりすぎて、よほどの鉄道好きでなければ、首都圏在住者が試そうというコースではなかった。さらに、JR東日本にとっても意外だったのは、はやての開業後、八戸のびゅうプラザの売り上げが倍増したことだ。青森から東京への移動が増えたのだという。これは、首都圏からの観光客増加による経済効果によるものとも捉えられている。新しい人の流れがつくられたことになる。能登開港で北陸商品が多様化もうひとつ、国内観光にとってエポックメイキングだったのが、昨年7月の能登空港開港だ。全日空が羽田/能登線を就航したが、近年の国内航空は、どちらかというと幹線以外は減便・撤退が多く縮小気味だったため、久々の新規路線開設となった。これまで首都圏から能登への旅は、小松か富山と組み合わせて2泊3日が一般的。それが、出入りに能登空港と小松空港の2つを利用することで、能登と金沢を1泊2日で楽しむことも可能になった。航空路線だけでなく、二次交通の充実のため、地元で開始した相乗リタクシーサービス「ふるさとタクシー」も旅行客に好評だ。エリアごとに共通料金で、能登空港から和倉温泉まで1人1000円。最も遠い金沢市エリアでも2000円ですむため、旅行会社もパンフレットに同サービスを記載している。石川県によると、輪島温泉では03年1~ 6月までの宿泊客が5800人と、前年比12%マイナスとなっていたが、7月の開港以降、12月までに前年同期を12%上回る10万1000人が訪れた。今年3月に開業した九州新幹線は、首都圏からの旅行需要喚起に直接的な影響を与えてはいないようだが、九州ではかなり大きな変36 観光立国への道「