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概要

40_1964-2003

テーマ4 旅館ビジネスにニューウエーフ●新世代が演出する宿の個性旅館が個性を持ち始めた。どこに泊まっても多少の違いはあれど、基本は似たり寄ったり、それがいままでの旅館だった。だが、何を目的にした宿なのかを表現し、旧来の運営方法に疑間を抱き新たな原点を求めることで、いままでみられなかった発想の旅館が増えている。発信するものが明確な宿には、マーケットも確かな反応をみせている。 ●日本の枠にとらわれず天草◎石山離宮・五足のくつ「目的とする宿が遠くにあるのは悪いことではない。投資のきっかけは、わぎわざ行かないとたどり着けないような場所にあったから」。熊本県の天草にある「石山離宮・五足のくつ」のオーナー山崎博文さんはそう話す。東京から「五足のくつ」へは、飛行機ならまず福岡に飛び、福岡空港から天草エアラインで天草まで35分、天草空港から車で40分かかる。天草の旅館街からも離れた自然豊かな場所で、東シナ海に面した天草西海岸にある。旧来の発想なら、そんな遠いところに宿を作ってもお客様は来ない、と考えがちだ。だが山崎さんの考えはその逆だった。「ようやくたどり着いたという感覚が、旅の充実感を生む」。オープンしたのは02年7月。当初から予約は順調で、現在も平日は年明けまで満室、週末は3月まで予約が入っている状況だ。オーバーブッキングを避けるため、予約は半年先までしか受けないことにしている。つまり週末予約は、めいっばい先まで埋まっている。山崎さんは現在41歳。20代でアフリカやヨーロッパのさまざまな国を旅行した。「大自然のなかにある隠れ家が、これからはもてはやされるようになる」と予感したことが、「五足のくつ」開業につながっている。客室は全部で10棟。全室離れで、露天・内風呂つき。各棟デザインが異なるが、大きくは“天草らしさ"をテーマにしたワンルームまたは2階建ての6棟、“アジアのなかの天草"をテーマにしたメゾネットタイプの4棟という、2つのゾーンで構成される。ほかに食事棟があり、個室で懐石料理が楽しめる。“アジアのなかの天草"は、ホテルの2大コンセプトのひとつでもある。ほかのひとつは自然のなかの立地でお客様を元気づける、インスパイアすること。そして、地域性にこだわった結果生まれたのが“アジアのなかの天草"というコンセプトだ。「地域性にこだわりたいと思34 観光立国への道天草スタイルを追求し、独特の雰囲気をつくり出している(五足のくつ)っても、日本のなかの天草という視点では、どうしても数奇屋造りから抜けられない。それでは天草にこだわりたくても、その何たるかが除立たない。枠を取り払い、アジアの中の天草という視点を持ったとき、天草スタイル、天草イズムという独特なものが生まれた」という。山崎さんは代々続く和風旅館も天草の旅館街に経営している。伝統的なやり方を見て、海外旅行で多くを感じたからこそ、時代のニーズに合った「五足のくつ」が生まれた。「マーケットが何を求めているかを考えなければいけないのに、旅館は長い間、そのルールもシステムも、自分たちの都合でやってきた」占い概念からの脱却小樽◎小樽旅亭・蔵群北海道小樽にある「小樽旅亭・蔵群」も、既成概念を覆すことで生まれた宿だ。宿泊料金は休前日やピーク時に高値設定になっているのは当たり前。その当たり前に疑間を持つことが、年間を通じた一律料金のきっかけとなっ●●●た。蔵群の料金は1室2名利用で1人3万6750円、1室3名以上の利用なら1人3万1500円。年末年始もゴールデンウィークも同一だ。料金には2食分が含まれているが、館内での飲み物もすべて無料となっている。つまり、日本では珍しいオールインクルーシブ制。オープンしたのは02年5月。料金の高さに最初は驚かれた。一律料金、オールインクルーシブのやり方も日本には馴染みがなく、個人客に対象を絞ったため旅行会社も通していない、など開業当初は不安だらけだったと、予約担当の三宅智之さんは振り返る。実際、最初の半年は予約がなかなか入らなかった。だが、全国放送のテレビ番組をきっかけに、数え切れないほどの雑誌で取り上げられ、9月には年末年始が満室になった。今年も順調で、稼働率は6月80%、7月85%、8月90%。一番先の予約は06年の元旦に入っている。宿泊者が何に満足しているか。三宅さんは「静かで日常を忘れて過ごすことができる」点を挙げる。ホームページの掲示板にはこうした声がしばしば寄せられるそうだ。静かに過ごし「ヽ、 ‐ 、Lい・‐一.″ ´ ´ ´,デ. ヽ、__′ . ´ ‐・‐|