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概要

35_1964-1999

が,なんとなく気恥ずかしいというような時期がありましたね。私自身,ずっと旅行は1人で行くものと思っていたんですが,初めてツアーに参加した時,その価値を発見しました。それは「人間関係」なんですよ。任意で集まった人々と,何日かの間,文字通り寝食を共にするわけで,人間的な交流が深まる。私は70年頃にツアーで一緒だった人と,いまだに連絡をとっているほどです。例えば今,やたらと携帯電話が流行っているのは,人と接触したいという本能ゆえだと思う。新しい人間関係,新しいコミュニティーを築くためにパッケージ旅行は重要な役割を果たしていくのではないですか。共通の興味や趣味を持った仲間やクラブでの旅は今後ますます増えるんじゃないでしょうか。だからと言って,全国から見知らぬ人が集まり,グループを結成し,寝食を共にするという従来のパッケージ旅行が無くなるとも思いません。新たな人間関係を求める人は必ずいるはずですからね。人間観察の上からもグループツアーは実に面白い。田□國璽憂劉海外旅行産業35年の総括と21111紀への展望国策としたいインバウンド対応,新“3コウ"と“可処分時間"も鍵森谷 いよいよ21世紀も秒読み段階となってきましたが,次世代の海外旅行のあり方について,提言を含めてご意見をいただけますか。兼子 20世紀後半は,消費が発展して大量生産,大量消費から個性化の時代へと移行した。間もなく始まる21世紀に旅行は消費の大きな一角を占めるでしょう。これからの消費は自己実現,自己の充実へ向けたものが中心になるからだ。自分の教養を高めるため文化教室や講座などの学校へ行く,自分自身の健康管理や美容に力を注ぐ,そして旅行を楽しむ。西武百貨店副社長の坂本春生さんはこの「学校」「健康」「旅行」の志向を新しい“3コウ"と呼んでいらっしゃる。この中でも中心となるのは旅行で,旅行者層はますます多様化するだろう。若い人だけでなく,60~ 70代の元気で,可処分所得が高い層が増える。これらの人々が個別に家族やグループ単位で自分で作る旅と,パッケージ旅行とに三分されるであろうが,業界としては,優れた品質・価格の商品を造成し,マーケットに訴える能力というブランドの価値を高めていくことが重要になるでしょう。また環境整備として可処分所得も大切だが,“ 可処分時間"を増やす方策も必要だろう。来年から成人の日と体育の日が3連体になるが,これで需要も増えるでしょう。同時に,子供連れで旅行ができるように,夏休みを短くしてでも他の時期に1週間程度の休みが取れるようにしてくれるとありがたいと考えています。松山 旅行業にはインバウンドとアウトバウンドがありいずれも重要です。アウトバウンドには,日本人が海外に出て異文化に接するという意義があり,他方インバウンドは,海外からも多くの人々に来てもらい素顔の日本をよく理解してもらうという,重要な役割があります。そしてこれらは結果として大きな経済効果にもつながって行きます。つまリインとアウトの両方を充実させることが,それぞれの国の観光にとって重要だということです。日本の場合その差があまりにもアンバランスです。試しに2国間の“2ウェイ比率"を作ってみると,98年の日本人の渡航者数1580万人に対し訪日外国人数は410万人で,1対3.8です。香港と比べると1対1.8,台湾では1対0.9で,台湾からの訪日者の人数の方が多いのですが,韓国は1対2。まあ,アジアについてはほぼ措抗しています。一方,米国については日本人の渡米者数2θP R O F I L Eもりもと てつろう1925年生まれ。東大文学部哲学科から同大学院社会学科へ進み,卒業後,朝日新聞東京本社入社。学芸部次長,編集委員を経て76年退社。以降,評論家として活躍。88~92年には東京女子大学教授も勤める。著書は「文明の旅」「ある通商国家の興亡一カルタコの追書」など60冊以上。・ヽ「一,´・与‥ヽ一―――‐ ― 々な旅の開発〃への投資努力が今ひとつ足りないのではないか。れが生き残りの重要なポイントだ"●:にス:鰻、』ノ