ブックタイトル30_1964-1994

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概要

30_1964-1994

行をすることが大学生たちのファッションになった。昭和58年(1983年)に取得した4冊めのパスポートは,赤い表紙のものだった。旅券番号はやはり7桁であったが,数字の前のローマ字の記号がそれまでのMEからMGに代わっていた。MGの旅券で500万人,MEの旅券で500万人の合わせて1000万人がパスポートを持っている,海外旅行大衆化の時代に日本が突入していたのである。事件記者の同僚が扱うニュースにも,パスポートの紛失とか盗難とか偽造といったやっかいなものが登場した。遊びで外国に行くのはいいが,駐在員として外国に行くのは嫌だという新しい意識が日本人のなかに生まれたのもこの頃である。帰国子女は一時代前と違って, もはやエリートではなくなった。航空会社の支店長をしている友人から,最近,おもしろい話を聞いたことがある。流行になった新婚パックという団体旅行についてだ。飛行機の座席は2本の通路の窓側に3席,通路と通路に挟まれて6席という配置で,並んで座るカップル同士が手をつなぐから必然的に通路はつないだ手でふさがれる。だから,客室乗務員は機内を歩き回らない(サービスをしない)で済むというのだ。赤い表紙のパスポートで私は最初にジュネープ,そして次にロンドンに勤務することになった。ジュネープでもロンドンでもパスポートは必携品であった。東をのぞく三方をフランス領にとり囲まれているジュネープでは,車を運転していて道を間違えるとそれだけで国境を越えてフランスに入ってしまうことがある。それだけではない。国境を越えたフランス領にあるレストランに昼食を食べに行ったり,(冬のあいだ)フランスやイタリアのスキー場に日帰りで滑りに行くというのは日常のことだ。だからパスポートは常に身に着けておく必要があったのだ。残念なのはスイスと国境を接するフランス。ドイツ。イタリア・オーストリアの各国とも,出入国に際してパスポートにスタンプを押してくれなかったことだ。国境の出入りにいちいちスタンプを押したのではパスポートのページがいくらあっても足りないという現実的な理由があったのだが,はるばる日本からやって来たお客さんを連れて朝ジュネープを出発し,モンブラン山の展望台に登り(フランス領),モンブラン・トンネルを抜けてイタリア領に入ってスパゲッティを食べて,ジュネープにその日のうちに戻ってきても,お客さんのパスポートにはその“国際旅行"の証拠が残らないのであった。赤表紙の2冊めのパスポートではロンドンに赴任することになったが,やっかいなことにこのパスポートにはイラクのビザと入。出国の記録が記載されていた。イラクがクエートに侵攻した直後に,私はイラクを取材していたのである。イラクについてのこの“証拠"が, ヨーロッパではトラブルの種になることがままあった。イラ中東にもようやく和平の光が見え始めた(エジプト)クがヨーロッパにテロリストを送りこんでいると信じられていたからである。とりわけイスラエルやエジプト,それにヨルダンなどに行く時には,そのパスポートでは厳重な身体検査と持ち物検査をされるのがオチであった。赤表紙の3冊めのパスポートをロンドンで手にしたのはそうした事情からであった。一時期ではあるが,私は2冊の有効なパスポートを所持していたことがある。イスラエルに行ったことが分かるとアラブの国は入国させてくれないから,イスラエルに行くときのパスポートとアラブの国に行くときのパスポートというふうに使い分けることもできた。そして赤い表紙のパスポートの有効期限が切れて7冊めのパスポートを手に入れたのが平成5年(1993年)の3月。表紙の色はふたたび青になったがサイズが小さくなっていた。最近もこのパスポートで中国を取材してきたばかりである。旅券番号は7桁で記号はMN。外務省によると有効なパスポートを所持している日本人の数は2000万人に上るという。四方を海に囲まれているため外国に行くことが何か特別なことだと考えていた意識から,外国に行くことが当たり前という意識に, 日本の時代も大きく変わった。運転免許証とパスポートはもう必需品である。2]腱甕醸朦´ }●L「▼.ロロ"嘔――キー一巌■1‥ ―――「一 1,・一 ‥″ 一■■■〓ヵ鋼じ‐,″・ッ1手´‐■― う´′c二`‐`:。)“ I・■t rl,た・ι麟