ブックタイトル30_1964-1994

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概要

30_1964-1994

高度情報化社会に生きる旅行産業の根幹を形成「旅行産業は情報産業」とも言われる。世界中の情報が旅行産業に集積されるからである。その中核を成すのがコンピューター・リザベーション・システム(CRS)。元来,航空会社の予約システムとして開発されたCRSだが,コンピューター最大の特徴である情報処理能力がグレードアップするに伴い,単なる予約システムから旅行情報ネットワークヘ,さらには企業管理システムヘと変貌。それは同時に,情報戦争と言われる現代では企業間競争の強力な武器でもある。れほど正確な情報の提供を顧客から求められていなかった。海外旅行がまだ高嶺の花であった時代である。海外とのやり取りは, もっぱらケーブル(電信)とテレックスに頼っていた。当時の名刺には必ず,このケーブル番号とテレックス番号がアドレスと一緒に刷り込まれていたものだ。海外観光渡航自由化とともに,航空機による旅客が増え,1967年に日本航空が国際線電子予約装置としてJALCOM Iを開発,稼働を開始する。読んで字の如くJALのコンピューターというわけで,これが日本における国際線予約のコンピューター化第1号である。しかし,「予約装置」と自ら呼称しているように, これはあくまで予約業務を支障な〈遂行するための装置であって,予約業務がシステム化されたわけではない。まして,現在のような顧客管理までできるという代物ではなかった。それでも,予約業務はこれによって大幅にスピードアップされ,業務も簡素化された。旅行会社独自の情報システム開発航空会社のこうした予約業務コンピュ航空会社,旅行会社でコンピューター単先争CRSの歴史はまだ浅い。その歴史は旅行産業のコンピューター利用の歴史そのものである。コンピューターで情報処理しなければならないほど旅行者が増え,産業内の情報が増えてきたことを意味じているからだ。その動きは,海外観光渡航が自由化された1964年と軌を一にしている。その年の1月, 日本航空が国内線の航空券をIBMカード化したのに続き, 7月には全日空がオンライン・リアルタイム・システムによる座席予約装置の運用を開始。同じく,国鉄(現在のJR)も座席予約装置「マルス101」の稼働を開始した。やがて,この3社のコンピューターシステムが旅行業界に大きな影響を及ぼすことになる。海外旅行業界にとって,「予約業務」はそれほど重要な仕事ではないと考えられていた。電話1本で予約が取れた時代だったし,航空会社の営業マンが毎日のように旅行代理店に顔を見せていたからである。第一,航空会社も旅行代理店もそ―ター化の動きに触発されたように,流通サイドにもコンピューター導入の動きが起きてくる。1969年に日本交通公社(JTB)がコンピューター旅館予約システム「トリップス・システム」の稼働を開始。同社が取り扱う全国2万2000室に上る協定旅館の予約をコンピューター処理しようというもので,旅行会社によるコンピュータープログラムの開発競争がこの時から始まった。翌70年に今度はアメリカン・エキスプレスがコンピューターによる海外ホテル2万7500室を網羅する即時予約「スペース。バンク」の業務を開始。海外旅行においてもコンピューター予約が当たり前の時代が来ることを予感させた。総合商品である旅行の一素材を成す宿泊分野のコンピューター化は,やがて旅行全般にわたる商品管理へと拡大し,さらに顧客管理へと独自の道を歩むことになる。コンピューター導入には巨額の先行投資が必要であり,中小規模の企業群が大半を占める旅行業者の間でコンピューター導入が可能なのは大手企業に限られる。コンピューターネットワークの構築はその大手の手に委ねられることになる。 そして, これによりCRSをも取り込んだ,他国には見られない旅行業者による世界的ネットワークが完成することになる。その波は企業OA化の動きによって,中小にまで波及する。2′ 6GRS