ブックタイトル30_1964-1994

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概要

30_1964-1994

30歳を分かれ日とした「新日本人」の海外旅行はJリーグ型に,おしゃれである。たまにわが家にお客様が見えるとなると,家中大掃除してきれいにするが,新日本人は,常に,動き,常にさまざまな他人と出会い,常に孤独な都市的感覚に生き,そのため常におしゃれである。ジーパンをはいていても,靴とか時計とか, どこかでさりげなくおしゃれをしている。決して仲間うち同士,アッパッパとか野良着で一日を過ごしているわけではない。つまりは「ファッション感覚のある日常性」こそが,これからの海外旅行の第1の基調である。海外旅行で国際感覚を磨く,などという発想は「旧日本人」のものであり,若い人たちはごく自然に土地の人と触れ合う。現地語で何と言うかと「旧日本人」が難しい顔をしてあれこれ思い悩んでいる間に,「新日本人」は笑顔でアンニョンハセヨ,ニーハオ,ボンジュール,あるいは日本語で「今日は.′ 」などと言いながら,隣のテーブルのおいしそうな料理を, 自分も食べたいと手真似で示す。いずこも同じ, という感覚の旅である。ウィーンのレストラン,「ドライ。フザーレン」(「3人の軽騎兵」)では,オードーブルが大きなワゴン2つで50種類も出てくるが,こうなると言葉などどうでもよく,あれもこれもと指で注文し,オードーブルを自分なりに「イ乍る」ことができる。このようにして,「自分なりに日常生活を作る」要素を設計することは,これからの海外旅行に欠かせぬ2つ目のポイントである。動く「新日本人」はそのぶん,孤独だからであり,「私の海外旅行」を体験し,創造したいのだ。第3のポイントは,「学び」の要素である。海外旅行はレジャーであるとともに商用とか研修,学習の意味を持つ。つまりはボーダレス性が,これからの海外旅行の特色である。誰もが未来に不安を抱いているからであり,漫然と暇潰しに遊んではいられない。おいしく楽しくて,健康的で, しかも勉強になる海外旅行を買いたい, というのがこれからの誰しもの願いであろう。ヨーロッパの旅行者たちも,手にミシュランのガイドブックを持ち,カテドラルの彫刻などを一生懸命勉強しながら,真面目にヴァカンスを楽しんでいる。そのための, いいガイドとガイドブックが欲しい。おしゃれな日常性,私なりの海外旅行,そして頭が良くなる旅一この3つの願いを満たしてくれるような,新しい大航海時代が,いま拓けようとしている。r9