ブックタイトル30_1964-1994

ページ
115/276

このページは 30_1964-1994 の電子ブックに掲載されている115ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

30_1964-1994

【旅は世につれ,世は旅につれ】ギブアウェイ用として各国のシティ・ガイドを制作していたが,これが格好の標的となった。だが,たまたま編集ミスが出ると,これを盗用したイt財土の出版物までがそのまま間違える“1社こけたら皆こける''ドミノ現象力涎勢る。同社がタイのスコタイの市内地図と遺跡の地図を間違えて挿入した時も,他社も一斉に右へならえをしたという笑えぬ事実がある。それを訂正したら,また一斉に訂正したと,編集担当者は苦笑いする。そして,同業他社から,「いや,お宅の新刊のお陰で大変助かってますよ」と挨拶されると,返答に窮するそうだ。一方,ガイドブックでは実績のある日本交通公社出版事業局はどうなのか。皇居前の流血メーデーの起きた1952年に『外国旅行案内』を発刊。その後改訂が行われ60年にはブルーの表紙の4分冊を発行,69年には改訂22版を重ねた。定価は1冊1800円。そして,自由化前年の1963年に『アロハ・ハワイ』,続いて『東南アジア』を発行,以後,ワールド・ガイド・シリーズに継承され,現在に至っている。また,ユニークなところでは71年にパン・アメリカン航空が顧客のために企画し,日本リーダーズダイジェスト社が発行した『楽しいハワイの旅』が`ある。当時としては珍しいカセットテープ付きのガイド・ブックだった。この他,ガイドブックの古典的存在としては,戦前の社団法人ジャパン・ツーリスト・ビューロー時代に発行された『旅程と費用概算』に『台湾旅行』,『鮮満支旅行』,『朝鮮金剛山探勝』などの海外旅行の記述もある。し▲当時としては珍しいカセット会へ,都会から村落を掘り下げるというオルグ方式に進みつつある。その一方, リゾート・シリーズなどでは版型を変え,カラー写真の多用によリデラックス化の方向性を垣間見せる。かつての海外放浪組の汗は消えている。写真多用というガイドブックのスタイルは, 日本と欧米のそれとの基本的な違いである。ブルーガイド初期の編集は,記事中写真を多用することによって,活字中心の旅行案内書からの転換を図り,当時の若い読者の注目を集めた。それが定番となり日本のガイドブックには風景写真が不可欠の要素になった。欧米の場合を見ると,かつてのミシェランの赤シリーズのように,地図と記述で埋められている。実業之日本社が1963年に日本語版の出版権を獲得した『ミシェラン。グリーンガイド』では,名所。旧跡の略図と同時に風景写真が挿入されている。新しい変化の現れである。この相互の違いは版元のミシェラン自体がタイヤメーカーであるという企業体質から「走り優先」の実利主義に徹しているのではないかと思われる。そして,アメリカの場合も,石油会社, レンタカー会社などが発行しているロードマップが,ストレートな地図一点張りであるのと共通性を感じる。さらに, うがった見方をすれば地図から立体的に旅行像を組み立てる欧米人の性格と,絵面から情緒をわかす平面的な日本人との体質の相違ではないのか。海外観光渡航自由化から30年を過ぎた今,旅行者の海外旅行に対する享絲東度は向上した。ガイドブックの提供する情報の質も尖鋭化する。読者があっと驚く未知の情報の発掘が今後の課題になる。「ショッピング,グルメ,アトラクション中心の実利的な情報提供も必要ですが,世界という枠の中で,歴史や異文化交流のガイド役を務めることがガイドブックの社会性に通じると思います」(平野幸男ブルーガイド編集長)という本来の旅行案内書の王道と,食った買ったの実利主義優先の地域案内カタログの,どちらを選ぶかは消費者の選択である。I13ガイドブック第3世代の登場ふ′ψlレ '″ヽR圭占 テープ付きで発行された「楽し' ~V′ "`JA'` いハワイの旅」だと, どこまで一時は外務省に苦い顔をされたが,ヤングの自由旅行者に多くの支持者を持つのが純粋戦後派の『地球の歩き方』(ダイヤモンド・ビッグ社刊)である。1979年の9月,コーロッパ,アメリカの初版発刊以来,93シリーズを出版している。『地球』の特異性は,前述2社(実日,JTB)がオーソドックスな旅行案内書を基調として成長してきたのに対し,旅行者からの生の情報提供をガイドブックの中に盛り込む「旅行者参加編集」の連帯意識が若者の共感を呼んだ。だが,最近では初期のバックパッカー志向の姿勢から徐々に変化し,旅行者の多様化に対応するため,シリーズの細分化が行われている。ちなみに,そのシリーズ別では,本体のガイドブック,辺境向けのフロンティア,快食ガイドの旅のグルメ,快適型のリゾート, 目的旅行を対象とした旅のマニュアル,など幅広い対応を見せている。そして,同じロンドンでも,「ヨーロッパ・シリーズの中のロンドンと,イギリス・シリーズの中のロンドンと,ロンドン・シリーズの中のロンドンでは,読者のニーズに合わせてそれぞれ旅行情報の内容を変えている」(編集部)という旅行者へのセグメンテーションカM子われている。総花的に1冊ですべての情報を盛り込むのは無理な時代になったのだ。その手法も,地域から都を外国と限定するかという問題も残る力ヽガイドブックの原点として貴重な資料である。1931年発行で正価金壱円参拾銭,博文館発行。このように,戦前,戦後の古典時代を経て1980年代に入ると,ガイドブックも従来の縦組から横組出版が増加傾向を見せる。ブルーガイド・パックワールド(実業之日本社),ポケット・ガイド(日本交通公オDなどの新シリーズの発行がそれを物語る。縦書き文化と,横書き情報の交錯が始まっている。「¬L」な