ブックタイトル30_1964-1994

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概要

30_1964-1994

渡航記念風呂敷からパーカー9ジョニ黒今ではサッカー・グッズ日本人の旅行には土産物が付きもの。今では外国製品も珍しくはないが,海外観光渡航自由化直後の旅行者は,舶来品なら何でも来いの時代。パーカー万年筆からボールペンまで20本ヮ30本と買い込む。それでも足りない時には帰国するやいなや海外生産物専門店に走った。洋行は旅行鞄から始まった海外渡航土産は記念風呂敷ともとが嘩包を扱っている関係で洋行知識は豊富。当時の政府要人の渡航支度一切を引き受けていた。戦前には,1921年にロンドン軍縮会議全権団の洋行身支度―切を調達。1930年の海軍軍縮会議全権団も三洋堂で身支度され,洋行した。戦後では1949年,日米水泳選手権大会に参加したの古橋広之進など, 日本チームの面倒も見た。また東京オリンピックでは,聖火輸送の特殊装置を開発したケースを用意するなど,常に時代を象徴する出来事に立ち会ってきた。いわば,戦前からの海外渡航の考証人と言える。三洋堂が海外旅行に必要な渡航用品一切を手掛けたのは1954年。官公街からほど近い場所に位置している優位さも手伝い,当時の要人のスーツケースから背広,ヮイシャツ,下着,靴まで一切の調達をした。当時,海外観光渡航はまだ自由イじ狭前であったため,渡航者は公用,外交,産業視察,業務旅行などに限られており,大蔵省の渡航審査会でパスしなければ毎外渡航はできない戦後の鎖国時代。そして, 日本もまだ戦後の復興期であり,物質も豊かではない。この時期に海外渡航支度を引き受ける三洋堂には,渡航者の注文が殺到した。まだ,満足にスーツケースも揃わない時期である。産業視察旅行の団体から注文がくると,全部統一したケースを作りそれにエナメルで順に番号を振っていくという超多忙な毎日が続いた, と丸山岡ll:F期輛役社長は回顧する。ジョニ黒2本にナポレオン1本,外国煙草200本。これは自由イじ1降の日本人の海外旅行者の土産物必携三種の神器であった。非課税枠内で日本国内に持ち込める高価な洋酒を虎の子のように抱えて帰国するのが日常的な空港風景。外国でのショッピングでは,パーヵ―,モンブラン,シェーファーの万年筆やボールペン,ダンヒル,ロンソンのライターが人気。外国製の時計は非課税枠内のUS$5研目当のユニバーサルが好評。女性はハンドバッグや香水に熱を上げた。貿易自由港の香港。ネーザンロードの土産物店や,ロンドンの有名デパートは日本人の買い物客で,盆れた。日本人の土産物好きは,旅立ちにもらう餞別と不即不離の関係がある。だが,初期の海外旅行で許された外貨枠は年1回USS500。当時の交換レートはUSS l=360円,邦貨換算18万円。不足分を補うには,円が自由に使える日本で土産物を調達しなければならない。そこで帰国者たちが駆け込んだのが海外土産物専門店であった。東京。新橋にある三洋堂は,この商売の老舗。現在では新設の大阪支店を合め10店舗の全国展開を図っている。もとはと言え|ム明治40年に丸山正吉氏(現会長)が横浜の弁天通りで外国人相手の鞄店を開業したのが始まりで,後に東京新橋に本社を移転,以来,87年間の歴史をrθ21960年代になると,日本も高度経済成長の兆しが見え,街には商品が溢れる。こうした環境の中で,三洋堂は新橋店開業以来手掛けてきた服装中心の海外渡航用品調達から,海外土産物販売への方向転換を図り,海外観光渡航自由化1年前の1963年には,この路線で営業を開始する。だが,土産物といっても,当時では今のように並行輸入ができるわけではなく,品揃えにも限度があった。そこで売り出された第1号商品は,海外旅行記念風呂敷である。世界地図を染め抜いた風呂敷に旅行経路と署名入り。これを友人,知人,親戚に配る。この記念風呂敷が爆発的な人気を集めた。特に地方からの注文が多かった。またお客として学校の先生が急激に増えた。これは,1970年代に文部省主導による海外教育事情視察旅行が実施されたことによる。戦後の民主化教育盛んな日剖tに,海外の教育事情を視察したことは先生にとっても格好の箔付けになる。校長先生をはじめ,中には30万円,40万円と買い上げた先生方もいたという。教育者も海外旅行に鼻を高くした時代。この記念風呂敷は,古対?端康成氏もノーベル賞受賞記念に注文し配布したそうだ。お土産という日本的慣習と,海外渡航という新時代の旅行を,記念風呂敷で包み込んだあたりは,昭和版「和魂洋才」鮮やか|「 d■ 4ロロ. “つこ海外土産物編