ブックタイトル20_1964-1983

概要

20_1964-1983

“観光立国"ヘ占領下の支合動終戦から15日後の1945年8月30日,厚木飛行場に降り立った連合軍最高司令官ダグラス●マッカーサー元帥は,記者団にステートメントを発表した後, 日本側の用意した車で宿舎の横浜ニューグランド・ホテルヘと向かった 。この時の出迎え陣の中に外務省の要請を受けた圏東亜旅行社の社員十数名も混じっていた。そして, これが奇しくも戦後の外客あっ旋第1号となった。東亜交通公社は,外客の誘致あっ旋を行なう機関として,1912年(明治45年)に設立されたジャパン・ツーリスト・ビューローが戦時中の国策にそって改組。改名されたものだが,マッカーサーを厚木に出迎えたわずか2日後の9月1日には,同日本交通公社として再出発。翌46年6月には,早くも全日本観光連盟(全観連)が創設されるなど,戦後の観光業界の立ち上がりは実に素早いものがあった。戦後処理の混乱と絶望の渦巻く中にあって,すでに新生日本のあるべき姿として“観光立国"が描かれていたのである。それも,単に観光業界の復興ということに留まらず,明治以来の思想と伝統を踏まえた“国際観光国ニッポン"の創造と発展に向かっての力強い第一歩であった。観光事業こそ戦後の復興に多大の貢献を果たすはずだ, とする考え方はまさに達見だった。元来,資本,資源が乏しいうえに戦争ですべてを破壊され, ましてや国際的な経済活動を一切禁じられた占領下の日本にとって,外貨を獲得するための残された唯一の方法は,国破れてフ6も未だ全国各地に残る美しい風光を外国人に“売る"ことしかなかったのである。その後,続々と進駐した連合軍軍人とその関係者は,業務出張はもとより,視察,休暇,家族旅行の形で憧れの国“エキゾチック・ジャバン"の各地を訪れ,貴重なドルを落とした。そして, この動きは荒廃した地方の復興にも役立ち,観光事業を復興計画の重要施策の1つとする考え方を大いに助長した。当時,全国組織網を持った唯一の公的外客あっ旋機関であった日本交通公社は,連合軍の駐留開始直後,GHQから,軍人・軍属,その家族,報道機関など関係外人に旅行上の情報提供,請負旅行のあっ旋,週末旅行の案内,添乗などの業務を行なうよう,命令を受けた。戦後の旅行業務の発端に 占領業務の一環であり,観光事業はすべて駐留軍を中心に展開し,発展していったのである。これに対して,国はわずかに,運輸省内に置いた観光係を全観連の発足に合わせて課|′C昇格させた程度。日本交通公社などの行なうあっ旋業務は,GHQの下請け業務ないしは駐留軍関係者との個人的契約に過ぎず,国の関与するところではない, といった認識に留まり,観光事業に対する理解度は低かった。民潤貿易昇用で活気づく外客往来ところが1947年に入ると,情勢は一変し,国の施策の根本的見直しを迫られるような事態が相次いで現出した。まず7月に米国のノースウエスト航空が東京への乗入れを開始し,次いで9月に,パンアメリカン航空も東京線を開設。10月には,アメリカン・プレジデント・ライン(APL)が極東航路を再開して,横浜寄港を開始。日本の民間貿易も同月から再開されて,′ヾイヤーが多数,来日するようになった。12月には,1940年以来7年ボリに,戦後初の外人観光団72名がAPLの「プレジデント・モンロー号」で訪日,横浜・鎌倉への日帰リバスッアーを楽しんだ。しかし戦後の外国旅行は, もはや主役の座を航空機に譲りつつあり,戦前の主流であった海路やシベリア鉄道などの鉄路は大きく後退していた。この後,外人旅行や海外旅行のあっ旋業務も,空を中心に再開されてゆくのである。こうした内外の情勢に対処して,48年11月13日に,交通公社,京阪神急行,西鉄,阪神,近鉄, 日通, ジャーディン・マディソンの7社が,IATA(国際航空運送協会)旅客代理店の認可を受けた。明治以来, ジャパン・ツーリスト・ビューロー(東亜旅行社/′東亜交通公社/日本交通公社)が独占的に扱ってきた外国旅行あっ旋業務は, ここに完全な自由競争の下で,本格的に開始されたのである。■自由化前の海外旅行者数(1946～ !963)年 海外渡航者数19461947194819491950195119521953195419551956195719581959196019611962196325,80345,74449,26357,19476,12486,32874,820資料出典100 704外務省、法務省外務省「海外在留||`人数調査統計」旅券発給件数8121638573,2918,73713,44117,40119,44724,53333,69336,71736,64642,49957,15465,79868,40892,347振興期の況迷つヽら離陸海タト旅行自由千し前史