20代女子の旅行意欲 消費けん引する黄金世代

2025.03.10 00:00

(C)iStock.com/west

日本人の消費が停滞するなか、20代の消費が独自の動きを見せている。賃金体系の引き上げやコロナ禍での行動制限の反動なども重なり、家電製品や旅行などの消費が活発化しているようだ。中でもコロナ禍前に驚異的な出国率を誇った20代女子の旺盛な旅行意欲が再び注目を集めている。

 現在の20代は旅行以外の市場でも注目が集まるZ世代に当たる。その上のミレニアル世代(日本では「ゆとり世代」ともいわれる)が比較的、現状維持志向が強いのに対して、Z世代はグローバルな考え方を持ち、持続可能性などの環境意識や社会貢献意識が高く、よりアクティブであるという特徴を持つ。

 また、人口動態調査(厚生労働省)の「年次別父・母の平均年齢」から20代の親世代の平均年齢を算出してみると、父親は52.3~60.8歳、母親は51.8~58.3歳となった。バブル世代の定義はさまざまではあるが、概ね1962~72年あたりに生まれた53~63歳とされ、ほぼ一致している。つまり親世代の多くが若い頃から積極的に海外旅行や消費を謳歌してきたバブル世代に当たり、その影響を受けて育ったZ世代も消費全般に意欲が高い傾向が見られるのだ。

 当社の過去の調査結果では、消費にあたっての親子の関係性において新しい技術やファッションなどに関しては子供から親への影響が強いが、旅行や文化的なことに関しては親から子供への影響が強い傾向があることが明らかとなっている。Z世代も旅行全般に積極的だった親世代の影響を受け、他の世代と比べ海外旅行にも、より関心が高いようだ。また、親子で一緒に海外旅行をするといった行動も多いと考えられ、今後の旅行市場を支える頼もしい存在といえる。

 足元の旅行市場の動向を見てみると、訪日外国人旅行者の話題に押されがちではあるが、日本人の旅行意欲も底堅い動きを見せている。観光庁の宿泊旅行統計調査の2024年における日本人延べ宿泊数は19年比で101.6%(12月は速報値)となった。また、JTBが24年11月に実施した消費者調査の結果では、25年1年間の旅行支出に関し、「支出を増やしたい」という回答割合は25.7%で、「支出を減らしたい」の10.5%を15ポイント以上、上回った。物価高などはあるものの、人々の旅行意欲は失われていないようだ。

 また、同調査から性・年代別に25年における1泊以上の宿泊観光旅行の実施意向(「1回以上行ってみたい」と回答した割合)を見てみると、中でも20代女性の旅行意欲が高い様子が見てとれる。国内旅行に関しては全体では74.6%だが、20代女性は86.3%と9割近くが「行ってみたい」と回答した。2位以下には30代女性の81.2%、30代男性の78.0%が続いた。海外旅行についても全体では21.1%だが、20代女性は32.1%と3割を超え、次いで20代男性の27.8%、30代男性の26.0%となった。

 では、同じ20代でもなぜ男性と女性の旅行意向に差があるのだろうか。当社が実施した「国内旅行・海外旅行への意識調査」(24年3月)から、消費に関する意識を性・年代別に見ると、「家計に余裕はない」の回答割合はむしろ20代男性より20代女性の方が高かった。しかし、「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など自分の好きなことにはお金を惜しまない」は20代女性(26.4%)が男性(17.7%)を10ポイント近く上回った。20代女性にとって旅行とは、財布のひもを絞めるべきものではないようだ。

 もともと、男性の旅行は比較的単一目的(鉄道に乗る、写真を撮る、〇〇を見に行くなど)が多いが、それに対して女性は複数目的(ショッピングもしたい、温泉にも入りたい、おいしいものも食べたい、パワースポットやインスタ映えスポットも回りたいなど)の傾向がある。

【続きは週刊トラベルジャーナル25年3月10日号で】

早野陽子●JTB総合研究所主席研究員。自動車メーカーを経てJTB総合研究所に入社。生活者の特性をベースにした旅行者動向や市場規模などの市場推計、テキストマイニング、セグメント分析などのデータ解析の他、未来予測につながるシナリオプランニングなど長期トレンド分析なども行う。

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