観光庁予算の急所 成長ステージへの端境期
2025.03.03 00:00

日本の観光は昨年、インバウンドを中心に躍進し、第4次観光立国推進基本計画で掲げた訪日関連の目標を前倒しでほぼ達成した。新たなステージを目指す25年度の観光庁当初予算案は前年度比5.4%増の530億円となったが、次なる成長へ向けてどのように使われようとしているのか。
政府が閣議決定した観光庁の25年度当初予算案530億3300万円を過去の予算額と比較すると、20年度の681億円、19年度の666億円に次いで3番目に大きい規模となった。コロナ禍で21年度以降に急減した当初予算額は23年から回復し、以降3年連続で拡大している。
ただし、一般財源に基づく予算額だけで比較すると、18年度の216億円をピークに7年連続で減少。観光庁予算の大半は、19年1月から導入された国際観光旅客税財源で賄われるようになり、当初予算に占める割合はコロナ禍の影響が出る前の19年度が72.8%、20年度が75.0%だったのに対し、23年度64.3%、24年度80.1%、25年度83.2%と増大。8割を超える状況が定着しようとしている。
25年度予算案の国際観光旅客税財源について、観光庁は「概算要求の段階で470億円を見込んでいたが、その後もインバウンドの好調さによって予算決定段階では490億円を見込めるようになった。20億円の増額は大きく、結果的にデジタルノマド対応や収益改善事業、コンテンツ強化等の予算を積み増すことができた」とする。一方で、一般財源は減少傾向にある。25年度の89億3000万円は観光庁発足初年度の63億700万円、翌09年度の63億4800万円に次いで3番目に少ない。
なお、このところ一般財源や国際観光旅客税財源より大きな比重を占めるようになったのが、コロナ禍を機に膨らんだ補正予算だ。ピークの22年度には1500億円に達しており、23年度も補正予算等で689億円が上乗せされている。25年度は当初予算の530億円に加えて、前倒しで計上されている24年度補正予算の543億円の一部も使いながら事業展開していくことになる。
観光庁は25年度の当初予算について、「しっかりとした額を認めてもらった」とコメント。国際観光旅客税財源を充当して宮内庁計上となっている三の丸尚蔵館の整備費46億円と皇居東御苑大手休憩所の整備費3億円の合計49億円を含めて579億3300万円となる予算規模に満足感を示している。
観光庁の予算方針のベースは観光立国推進基本計画であり、25年度予算は同年を最終年度とする第4次観光立国推進基本計画に沿った形でまとめられている。基本計画ではインバウンドに関し、旅行者数をできるだけ早期に19年実績(3188万人)を超えること、消費額5兆円超え、25年までに消費額単価20万円以上といった目標を掲げている。24年は円安などの追い風もあって順調に回復し、訪日外国人旅行者数3687万人、消費額8.1兆円(推計)、単価22.7万円となり、いずれも目標をクリアしている。従って25年度予算は、基本計画の目標の先にある次なる成長ステージへの第一歩を踏み出す施策を支える予算という側面もあるわけだ。
予算を投じる施策の柱は、①持続可能な観光地域づくり、②地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取り組み、③国内交流拡大の3本。これは基本計画が掲げる戦略にそれぞれ符号する。このうち持続可能な観光は、「コロナ禍のダメージから訪日客数や消費額、国内観光需要などが非常に順調に回復しているなかで、人手不足や受け入れ環境整備、オーバーツーリズムといった課題が見られるようになり、これらにしっかり対応することを意識した」とする。
もう1つ課題となっているのが3大都市圏への需要の集中で、地方への誘客拡大の狙いを予算に込めた。「地方誘客はプロモーションももちろんだが、コンテンツ整備が重要で、より長く滞在し、より多く消費してもらえるコンテンツを整備すること、高付加価値旅行者に満足してもらうコンテンツをつくることを重視した」という。
カテゴリ#カバーストーリー#新着記事
アクセスランキング
Ranking
-
台湾、25年も日本から積極誘客 東京事務所所長の交代も発表
-
千代田区、蔦重で観光客増へ 大河ドラマにあやかりプロモーション
-
募集+手配の同時契約に光明 グローバルユースビューロー、高リスク商材を積極販売
-
感謝の継承
-
観光支援策の課題と展望 会計検査院報告を読み解く
-
桜シーズンの訪日需要が過去最高 アダラ調査 大津など地方のホテル予約急増
-
雨風太陽、OTA事業を開始 百戦錬磨から宿泊予約サイト譲受
-
1月の百貨店免税売上高619億円 春節効果で同月過去最高 単価もプラス転換
-
長崎港、英語ガイドを育成 県内在住24人がクルーズ客案内
-
Oooh、チャットとAIで現地に直接オーダーメード 「自由な旅を身近に」を実現