『ロイヤルホストで夜まで語りたい』 日本が誇れる食の舞台に逸話あり

2025.03.03 00:00

朝日新聞出版編/柚木麻子・朝井リョウ著ほか/朝日新聞出版刊/1760円

 「幸せってどういうことかというと、例えば体の芯まで冷え切った夜にオレンジ色のロゴが輝くロイヤルホストへ駆け込んで、熱々のコスモドリアを食べること」(「褪せない夢」より)

 わーかーるー。

 ちょっと高いけどサービスも味も雰囲気も平均以上、朝から晩まで開いているロイホは国民的なファミレスだ。そんなロイホ愛に満ちたエッセイアンソロジーが今回の一冊。人気作家17人がごひいきメニューや思い出のロイホ体験についてつづっている。

 通底しているのは、ロイホが“気張らないでいいけどちょっと特別な場所”であること。夜のロイホでモヤモヤした気持ちを抱えつつ先輩芸人を笑わせる青木さやか、前日からメニューをチェックする宮島未奈。中でも共感したのは織守きょうや「ロイヤルホスト慕情」。グルメ漫画「美味しんぼ」に登場する有名なとんかつ屋のセリフ「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ」を引用し、これが自分たちにはロイホに当たり、好きな時に来られる経済力を維持したいと語り合ったエピソードだ。ためらわずロイホに行ける経済力がある幸せ、超分かる。

 京都に暮らす私にとって、東急ホテル前のロイホは打ち合わせや原稿執筆に欠かせない存在だ。実は宿の外国人ゲストにもしばしばロイホを薦める。写真で選べるメニュー、座席は大きくサービスもいい。全部おいしいし、なかでもデザートは◎。まさに日本が誇れる食の舞台の1つだと思う。

 本書を読む人も、きっと自分だけのロイホにまつわる思い出が1つ2つ思い返せるはず。パラダイストロピカルアイスティーやオニオングラタンスープが懐かしくなること請け合いだ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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