JTB、AI時代へ事業ドメインを再定義 「デジタル基盤の上に人の力を」

2025.01.27 00:00

パートナーシップミーティングで講演する山北社長

 交流創造事業を事業ドメインに掲げてきたJTBは、その定義を見直した。地球を舞台に交流を創造するという従来の方向性は変わらないが、「デジタル基盤の上に人の力を活かす」とし、AI(人工知能)が劇的に進化するこれからの時代を意識した。つなぐ・つくる・つなげるを源泉に、人、情報、物の流れを生み出していく。

 1月16日に取引先企業などを招いた新年のパートナーシップミーティングで、山北栄二郎代表取締役社長は「人の価値をもう一度見つめ直さないといけない」と話した。「未来の姿を思い描いて今何をするか、そういう考え方をしなければ」とも指摘する。

 JTBの交流創造事業は、人だけでなく、人と地域などさまざまな形でつなぎ、課題解決を通じて未来につなげるという考え方。旅行者、地域、企業を顧客対象とした3つの領域で実践しており、昨年には多様な分野の人々から未来の交流のアイデアを募る「JTB交流創造キャンバス」を立ち上げた。「JTBは単なる旅行会社ではない」と山北社長はスタンスを強調する。

 25年に重視するトレンドは、パーソナライズ、ウエルビーイング、小集団化、ボーダーレスの4つ。そのうち小集団化はオーバーツーリズム抑制に向けた需要分散が背景にある。旅行グループの規模が小さくなるため、効率良いオペレーションが鍵を握る。

 AIを実装すれば、旅程作成、提案、マッチングなどさまざまな可能性が生まれる。その観点からも、共感や直感など人の力を磨く必要があると見る。DEIB(多様性、公平性、包括性、帰属性〔心理的安全性〕)に基づき人的資本を強化する方針で、山北社長は「DEIBがこれからの企業活力の根っこになる」としている。