訪日4000万人時代の評価 産業界の地位は上がったか
2025.01.27 00:00

観光立国宣言から21年。24年の訪日外国人旅行者数は7倍に増大し、今年は4000万人の大台乗せも視野に入ってきた。訪日外国人消費額も8兆円を突破して半導体産業を凌駕する。しかし観光産業はそれにふさわしい評価を得られているのか。実現間近となった訪日4000万人時代のリアルを考える。
日本政府観光局(JNTO)によれば24年の訪日外国人旅行者数は前年比47.1%増の3686万9900人となり過去最高を記録した。さらに今年、前年を8.5%上回れば4000万人台が実現する。JTBによると、25年の訪日外国人旅行者数は8.9%増の4020万人と伸び率はゆるやかになるものの過去最高を更新する見通しだ。
日本が観光立国宣言し訪日外国人旅行者誘致を本格的に始動させ、ビジット・ジャパン・キャンペーンをスタートした03年の訪日外国人旅行者数は521万人だった。今年4000万人台を実現すれば、訪日誘致に本格的に着手してから22年ほどでインバウンド市場規模は8倍近い成長を実現することになる。しかもこの間には、世界恐慌ともいえるリーマン・ショックや東日本大震災、そしてコロナ禍と、インバウンド市場を奈落の底に突き落とすような出来事が何回もあり、それを乗り越えての4000万人台である。
訪日外国人旅行者の増加に伴い、訪日外国人消費額も増大。24年の消費額は8兆1395億円と、過去最高を記録した前年を53.4%上回った。
訪日外国人旅行者数4000万人も、訪日外国人消費額8兆円も、過去を振り返れば夢物語に分類される出来事といえる。観光立国宣言をした03年当時、日本は観光後進国で訪日外国人旅行者数は日本人の人口の4.3%に過ぎなかった。世界の観光地図の中では地理的に近い隣国であり、国土も人口も日本の半分ほどしかない韓国への訪韓外国人旅行者数は日本と肩を並べていた。09年以降は韓国に水をあけられ、10年には韓国が日本の1.6倍もの外国人客を迎え入れていた。
その韓国と立場が入れ替わったのが15年で、訪韓外国人旅行者数1322万人を訪日外国人旅行者数1974万人が上回った。以降、訪日外国人旅行者数は16年2404万人、17年2869万人、18年3119万人、19年3188万人と、韓国との差を開いていく。
そんな転換があった15年に掲げられたのが訪日外国人旅行者4000万人の目標だった。13年には「観光立国に向けたアクション・プログラム」で「2000万人の高みを目指す」との目標設定がされたが、当時の感覚では2000万人は文字通りの高みで期待を込めた目標だった。しかし15年には2000万人台まであと26万人まで迫り、2000万人の次の段階の目標設定が必要となり16年発表の「明日の日本を支える観光ビジョン」の策定につながる。そこで設定されたのが20年4000万人、30年6000万人という、さらなる高みを目指す目標だった。
4000万人という目標設定は、過去の2000万人目標よりもさらに背伸びをしたもので、16年当時は業界にも「15年実績を5年で2倍にするなんて無理」という空気が流れていた。それも当然で従来は20年2000万人としてきた目標を、目標年度は同じ20年のままで、人数だけは一気に2倍の4000万人に引き上げたのだから高望みに違いない。同時に掲げられた訪日外国人消費額を20年に8兆円、30年に15兆円とする目標も同様に受け止められた。
その後、コロナ禍がなくても20年の4000万人・8兆円の目標達成は難しかったが、それでもコロナ禍の空白の3年間がありながらも24年に8兆円は達成、今年4000万人目標も達成できれば望外の結果といえるだろう。
こうしたインバウンド市場の拡大により、観光産業の地位が向上していることは間違いない。経済3団体はインバウンド市場や国内旅行市場が生み出す経済波及効果を念頭に、いずれも観光への関心を高めている。経団連は観光立国宣言以降、観光政策に関し政府への提言をたびたび行っており、22年にも観光立国推進基本計画改定に向けた提言をまとめ政府に提出した。
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