キーワードで占う2025年 大阪・関西万博からグリーンウオッシュまで

2025.01.20 00:00

(C)iStock.com/BrianAJackson

インバウンドのV字回復は観光の力強さと課題を浮き彫りにした。その流れの中で迎えた25年は日本の人口構造が変化し、旅の位置づけも変わりそうだ。成長に向けて基盤を盤石にできるか、節目の年を18のキーワードから識者・記者が展望する。

<Keyword>2025年問題 旅が幸福を得る手段に変化

 25年は団塊世代約800万人が75歳以上となり、国民の5人に1人が後期高齢者になる。少子高齢化による社会保障の負担増から旅行需要は縮小が懸念される。また、高齢者の医療費等の急増、宿泊業や観光施設では労働力不足の深刻化も指摘されている。

 しかし、65歳以上の高齢者を支えられる側ではなく支える側と見れば状況は変わる。就業者は00年の6500万人から20年には6700万人に増え、40年も6400万人と大きな減少は見込まれていない。高齢者の就業率は上昇しており、60代前半は00年代初頭から、60代後半や70代前半は00年代後半から増え続けている。元気な高齢者が働くことで労働力不足を補い、社会を支える側としての役割を果たしている。

 さらに外国人労働者の受け入れやデジタル化の進展が業務効率化や労働力確保を後押しする。AIや専門教育を施し、変化する個別ニーズに柔軟に応じることが重要だ。法整備も進み、高齢者が働きやすい環境が整いつつある。

 一方、人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸とともに介護が必要な期間も長くなっていく。多死社会が進み、40年には年間150万人以上が亡くなると予測される。長命は幸福について考える時間を増やし、旅は幸福を得る手段として求められる。心身を元気にする旅は健康維持だけでなく、企業の効率化にもつながるとデータは示している。

 これからの観光は、宇宙までフィールドを広げ、よりスピリチュアルな体験ニーズへの対応が求められる。旅の価値は、個々の満足や心の充足感にあり、高齢者や働く人の幸福を支える存在として重要な役割を果たしていく。

篠塚恭一●SPIあ・える倶楽部代表取締役。1991年にSPIを設立し現職就任。観光人材の育成・派遣に携わる。95年トラベルヘルパー(外出支援専門員)の養成開始、「あ・える倶楽部」の介護旅行事業に取り組む。2006年NPO法人日本トラベルヘルパー協会を設立し理事長に就く。

<Keyword>グリーンウオッシュ 誇大表示に規制強まる

 日本における「観光×サステナビリティー」の取り組みは国際社会と比較して遅れているが、見せかけの環境配慮、すなわちグリーンウオッシュが増加傾向にある。例えば、連泊時にリネン交換しない選択肢を設けるだけで「環境にやさしい」と表記する。教育旅行SDGsツアーといいつつ、実はほんの一部にカーボンオフセットプランを追加しただけなど。マーケティングやCSRの意味合いが濃いウェブサイトも増えている。

 欧州では24年2月20日、「グリーンウオッシュ禁止法」として、実質を伴わない環境訴求を禁止する指令案を正式に採択した。いまのところ日本ではグリーンウオッシュを直接規制する法律はないが、景品表示法や環境表示ガイドラインの中に含まれている。誇大広告に関する規制は、より強まるだけでなく、消費者への説明責任がより求められることが予想される。

 観光産業内に限らず平然と示されているグリーンウオッシュ対策も問題だ。SDGs達成への貢献を表明しているが、すでに取り組んできたことをアピールしたまでで、特に何もやっていない。変化の引き金となる行動を表明し、活動することが本来の目標である。

 目標を設定し活動していても、他の領域で負の影響を発生させ阻害しているのも意味がない。PRが主の目的で行動が伴わない場合、今後は罰則や罰金が設けられ、ウオッシュをしているサービスや商品、または組織そのものの利用を避ける結果になりかねない。

 SDGs教育を受けてきた次世代にウオッシュは通用しない。誤解を招く表示や行動を改める時期だ。

高山傑●スピリット・オブ・ジャパン・トラベル代表取締役/JARTA代表理事。観光庁持続可能な観光ガイドラインアドバイザー。グリーン・デスティネーションズ、トラベライフ、グリーンキーなど国際認証制度を日本に導入した持続可能な観光基準に関する第一人者。登録有形文化財春陽荘家主。

【続きは週刊トラベルジャーナル25年1月20日号で】

関連キーワード