『ドイツの心ととのうシンプルな暮らし365日』 日々の営みを国民性豊かにたっぷりと
2024.12.23 00:00
「一般的に何分必要だろうか?」
「うーん、人によりますが、だいたい1時間くらいですかねえ」
「では1つの湯船に何分漬かる?」
「特に決まりはないですが……」
これは、ドイツ人がわが宿にチェックインする時に“あるある”な会話だ。当館はゲスト全員に銭湯の無料入浴券を提供しており、興味津々の外国人ゲストの質問攻めによく遭う。なかでも「ルール」を聞きたがるのがドイツ人なのだ。湯船に何分入ろうがどうでもいいだろうが、と思いつつ毎回真面目に答えているが、本書の6月22日の項「なんでも数字で表す」で、これは国民性なのだなとあらためて納得。ドイツはチョコの含有量、ビールの量など端から数字が明記される「数字が大好き」なお国柄なんである。
本書はベルリンに18年暮らした著者が、ドイツの365日の暮らしを1日1ページずつ紹介したフォトエッセイ。
ごみの分別にこだわったり、ルールを気にする割にマイペースだったりと、私なりに感じていたドイツの国民性を再認識するような話もあれば、ニベアがドイツ発祥など「へー」な話題もあったり。オクトーバーフェストやハリボー、カリーヴルストといった観光客にもおなじみのトピックも満載。
365日分あるので、自分の誕生日がなんの話題なのか、なんて楽しみ方もある。ちなみに私は7月1日「工事期間は延長があたり前」だった(もうちょっとかわいいのが良かったな……)。
合理的かつ自分の意見を持ち、暮らしを大切にする。そんなドイツの普段の営みがバラエティー豊かな写真と温かみのある文章で紹介され、ページを繰るうちに、自分の暮らしもちょっと見つめ直してみようかな、なんて気持ちにもさせてくれる優しい1冊だ。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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